陰日向に咲く儚花

しかし、喜びとは裏腹に体調は悪くなっていく一方だった。

目眩に吐き気、喉の違和感と船酔いでもしているかのような具合悪さ。
まさに悪阻の始まりだった。

食べ物も限られたものしか食べられず、ニオイにも敏感になり、毎日飲んでいた野菜ジュースも飲めなくなってしまった。

それでも何とか仕事へは行っていたが、目眩が酷い日は早退させてもらう事もあった。

そんなある日、ついにわたしに"その時"が訪れた。

それはわたしが休憩室で休憩を取っている時だった。

わたしは野菜ジュースが飲めなくなり、炭酸水を飲むと少しラクになる為、炭酸水を飲みながらカップ麺のミニ蕎麦を食べていた。

するとそこへ、「何だ?こんなとこでサボってたのか。」という耳障りな声が聞こえてきた。

わたしがふとそちらに顔を向けると、そこにはわたしを見下したような表情で不敵な笑みを浮かべる竜介の姿があった。

「最近、事務室に来ないと思ったら、こんなとこに居たんだな。」
「今、休憩中なので、当たり前じゃないですか。」
「そんなんで大丈夫なのかよ。仕事が追い付かないんじゃないか?お前は昔から要領が悪いから、なかなか仕事が終わんなかったもんなぁ。家でもまともに家事も出来てなかったし。今でもそうなのか?」

竜介はそう言うと、わたしを馬鹿にするように笑った。

「最近、体調も良くなくて早退する事もあるみたいじゃないか。自己管理がなってないなぁ。そんなんだと、新しい素敵な旦那様にもすぐ飽きられちゃうぞ?」

自分の新しい家庭が上手く行っていないのか、普段のストレスをわたしで発散するかのように、やたらと絡んでくる竜介。

わたしは無視を続けようと思ったが、あまりにも竜介がしつこい為、まだ我慢しようと思っていた"その時"を迎える事にした。

わたしはスッと立ち上がると、竜介を睨みつけた。

竜介はわたしの行動に驚き、「な、何だよ。」と一歩後退りしていた。
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