陰日向に咲く儚花

わたしももっと言ってやるつもりだったが、わたしの代わりに周りのパートさんたちが竜介にダメージを与えてくれた為、わたしはかなりスッキリしていた。

すると、そこへ慈が爽快に姿を現した。

「菫、どうしたの?大丈夫?」

わたしと竜介が立ったまま向かい合っている姿を見て、心配して駆け付けてくれた慈。

わたしは「うん、大丈夫だよ。」と言ったのだが、慈の表情は険しく、その視線は竜介に向けられた。

「うちの妻に何か御用ですか?」

慈が低い声でそう言うと、竜介は少し焦りながら「い、いや、日向くんの奥さんが体調管理できてないみたいだったから、注意してたところだよ。日向くんに迷惑かけるなよってね。」と作り笑顔を浮かべて言った。

そんな竜介の言葉に静かにキレた慈は、「ご忠告ありがとうございます。しかし、妻は今妊娠しておりまして、妻の身体を第一優先にすべき時なんですよ。無駄なストレスを与えるのはやめていただいてよろしいですか?」と恐い笑顔を浮かべながら言っていた。

(こんな恐い慈、初めて見たかも······)

「妻の事は、僕が全力で支えていくつもりなので、野花課長は陰からそっと見守っていただけると幸いです。何より、ご自分の奥様を大切にされてはいかがですか?」

慈がそう言うと、周りから拍手が起こり、竜介は奥歯を食いしばりながら悔しそうな表情を浮かべ、「あぁ、そうかい。そんな女と一緒になった事を後悔すればいいよ。」と嫌味を吐いてきた。

「そんな、後悔するのは野花課長の方ですよ。菫と離婚していただき、本当にありがとうございます。そのおかげで僕は菫と結婚出来て、新しい命も授かる事が出来たので、最高に幸せです。野花課長には、感謝申し上げます。」

そう言って、慈は丁寧に竜介に向かってお辞儀をした。

すると竜介は、それ以上何も言い返す事が出来ず、乱暴な足取りで休憩室から出て行った。

わたしたちの周りからは更に拍手が巻き起こり、「日向主任かっこいー!」、「菫ちゃん、身体大事にね!」など温かい言葉をいただき、慈とわたしは最高にスッキリした気持ちで顔を見合わせ、笑い合った。
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