陰日向に咲く儚花


それから一ヵ月後、何と辞令が出て、竜介は降格して課長から主任となり、別の店舗への異動が決まった。
どうやら、先日の休憩室でのトンデモ発言が本社に伝わったらしく、そのような処分になったようだ。

そして、もう一つ。
わたしたちにとっても喜ばしい辞令が発令されたのだ。

「えっ?!慈が課長?!」

自宅で突然慈から話された辞令の話に驚くわたし。

まだ周りの人たちには知らされていないが、慈本人にだけ先に知らされたようだった。

「凄いじゃない!昇進おめでとう!」
「ありがとう。突然呼び出されて、何かと思ったら···」

そう言う慈は、困惑しつつもとても嬉しそうだった。

「でも、それならこれからもっと忙しくなるよね?それなのに···、わたしがこんな状態なら、支えてあげられないよ······」

わたしがそう言うと、慈は優しく微笑み「何言ってるの?菫は一番大変な"赤ちゃんをお腹で育てる"っていう大仕事をしてくれてるじゃん。それ以上なんて望まないよ。」と言ってくれた。

「それに、課長なんてほとんど事務作業ばっかりになるしさ。そんなに思うほど大変じゃないから。」
「そうなの?でも、慈が課長になったら···異動になるのかな?」
「今日聞いた話だと、甲斐課長が別の店舗に異動になって、俺が今の店の住余課長になるらしい。」
「そうなんだ!慈が課長かぁ〜!みんな働きやすくなるだろうね。」
「そうなるように努力するよ。」


2月の後半になると、事務室前の廊下に辞令が貼り出され、予定通り慈は住余課長へと昇進した。

そして労働環境改善の為に色々と計画を練り、人件費の問題にも着手して、ハードの人件費を上げる事に成功した為、今まで2人しか居なかったステーショナリーの人員が2人増やす事が出来たのだ。

その代わりというわけでもないが、わたしは今後の事を考え、フルタイムから慈の扶養に入り、扶養範囲内での勤務に切り替える事になった。

このまま課長が甲斐課長のままだったら、こんな事は許されなかっただろう。
慈だからこそ、出来た事なのだ。

< 108 / 114 >

この作品をシェア

pagetop