陰日向に咲く儚花


***



それから月日は流れ、わたしは安定期に入ると、やっと悪阻が落ち着いた。

お腹も徐々に目立つようになってきて、今まで通りとまではいかないが仕事も扶養範囲内の時間で続けられている。
そして、ステーショナリーに新人さんが2名入った為、わたしは一緒に仕事をしながら、通常業務を覚えてもらっていった。

新しく入社したのは、30歳のフリーターの女性と、25歳の堅い程に真面目な男性。
二人ともメモを取りながら、毎日一生懸命仕事を覚えようとしてくれた。


「菫ちゃーん!今日の調子はどう?」

毎日のようにそう話し掛けてくれるのは、ギフトコーナーの吉光さんだ。

その度にチョコレートをくれて、わたしの体調を心配してくれる。
ちなみに結婚祝いとおめでたで商品券を5千円分もプレゼントしてくれた。

「あんまり無理したらダメよ?具合悪くなったりしたら、すぐ言ってね!わたしが走って、日向課長連れて来るから!」

そう言って、全力で走る真似をする吉光さんを見て、わたしは笑った。

それから、ホームファッションの方だが、慈が課長になった事で主任枠が空いた為、他店から新しく石村(いしむら)主任がやって来た。

28歳の若い男性主任だが、頭がキレてなかなかハッキリとした性格をしており、森田さんを含めた癖のあるホームファッションの人たちを上手い具合に扱いながら仕事をしているようだった。

「石村くーん!これ重たくて運べないの〜!手伝ってくれなぁい?」

またいつもの森田さんの猫撫で声が響く。
石村主任は「はいはい。」といった感じで素早く動くと、森田さんに言われた段ボールを運びながら「森田さん、これが運べないなら、今まで何してたんですか?」と鋭いツッコミをされていて、森田さんは笑って誤魔化していた。

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