陰日向に咲く儚花

「それにさ、悔しいじゃん?自分に問題がないのに、責められ続けて······、本当は子どもがいる未来を思い描いてたのに、全部責任を押し付けられた上に諦めなきゃいけないなんて、悲しすぎるよ。」

日向主任は何だか切ない表情でそう言って、それからわたしの方を見た。

「だからさ···、見せ付けてやろうよ。俺たちが子どもを授かって、家族が増えて幸せになっているところを。野花課長にさ。そしたら、子どもを授かれなかったのは野花さんのせいじゃない!って見せ付けてやれるし、野花課長にもかなりダメージ与えられるんじゃない?」

竜介に、見せつける···――――

子どもを授かれなかったのは、わたしが原因じゃなかったって――――
問題は竜介にあったって、実感させてやれるチャンスかもしれない。

竜介に···ダメージを与えてやりたい。
わたしが今まで背負わされてきた責任の重さと、心に負ってきた痛みと苦しみを竜介にも味わわせてやりたい。

「どうかな?俺の作戦。あとは野花さん次第だけど······。勿論、野花さんが俺に気持ちが無いのは承知してるし、再婚すると決まるまで男女の関係になるような事をするつもりはないよ。」

日向主任はそう言った後、首を傾げてわたしの顔を覗き込むような仕草をし、「俺、頑張るよ。野花さんに俺の事を好きになってもらえるように。」と言って優しく微笑んでくれたのだった。

「まぁ、すぐに答えは出さなくていいよ。すぐに決断できるような話じゃないから、ゆっくり考えて、答えが出たら、」

と日向主任が言った辺りで、わたしは「します。」とハッキリとした口調で答えた。

その事に「えっ?」と驚く日向主任。

わたしは覚悟を決め、真っ直ぐに日向主任の方を向いた。

「日向主任と再婚、します。なので、その作戦でお願い出来ますか?」

わたしがそう言うと、日向主任は「まさか」とでもいったかのようにポカンとした表情を浮かべたが、すぐにクッと口角を上げ、決意の表情を変わると「わかったよ。じゃあ、よろしくお願いします。」と言って、わたしに片手に差し伸べてきた。

わたしはその手に視線を落とし、日向主任同様に決意の表情を浮かべると「こちらこそ、よろしくお願いします。」と言い、日向主任が差し出すその手をギュッと掴み、契約と誓いの握手を交わした。

これから始まる、竜介の不貞行為の証拠集めと、離婚、そして再婚への道のり。

時間をどれほど有するか分からないけれど、わたしは必ず乗り越えようと決心した。

日向主任となら、乗り越えていけるような気がした――――

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