陰日向に咲く儚花
「本来なら、嫁がご飯の支度を済ませて、旦那様をお迎えすべきなのよ?!それなのに、菫さんときたら同僚と食事に出掛けて、竜ちゃんの事を放っておくだなんて!嫁失格です!」
義母がそう言うと、竜介は調子に乗り「菫、残業ばっかりで俺より帰りが遅い事も多いんだよ。やっと帰って来たと思えば、まともな料理も作れないし···、正直俺も我慢の限界だよ。」と言い出した。
(我慢の限界?それはこっちの台詞よ。)
その後も義母のしつこい説教は止まらず、結局義母はうちに泊まる事になってしまった。
そうなると必然とわたしの休む場所はなくなり、毛布を掛けてソファーで眠るしかなくなる。
わたしは竜介の不貞行為の証拠を集め、離婚をする決意をしたばかりではあったが、更にその決意はより強いものへ固まったのだった。
(絶対、竜介には恥をかかせてやる。絶対、自分のやってきた事を後悔させてやる······)
そう思いながら、わたしは眠りに就いた。
***
あの日から、わたしは竜介が不利になるような証拠を集め始めた。
暴言を吐かれれば日記に記録しておき、モラハラ発言がLINEに残っていればスクショを撮って、竜介がトーク履歴を削除していたとしても大丈夫なように証拠を残しておいた。
それから職場でも、竜介と沙瑛さんの行動を気を付けて見るようにした。
二人が会うような事があれば、会話が聞こえる範囲まで近付き、その会話を録音するようにし、それは日向主任も同様、わたしの知らないところで同じように証拠になるようなものを集めていてくれていた。
それと当然、竜介が不利になるような証拠だけではなく、義母からの暴言も記録として残しておくようにした。
今まで散々、嫁イビリをされ続けてきた。
義母の事もこのまま許して終わらせるわけにはいかない。
今まで復讐心など湧き上がった事のないわたしがここまでしている事に、自分で驚きつつも、自分はこれほどまでに我慢を強いられ、苦しめられてきたのだと心底実感せざるを得なかった。