陰日向に咲く儚花

その後、わたしは自宅から遠く離れたファミレスに入り、珈琲だけを注文して一人でソファーに座り、ぼんやりしていた。

すると、握り締めていたスマホが振動し始める。

ふと画面を見ると、そこには"日向主任"と表示されていた。

「······もしもし。」

わたしが力無い声で電話に出ると、日向主任は『野花さん?今どこ?』とわたしを心配するように尋ねてきた。

無意識にわたしはこのファミレスに入ってから、真っ先に日向主任にメッセージを送っていたのだ。

わたしが自分が居る場所を伝えると、日向主任は『今仕事終わったから、これから向かうね。そこで待ってて。』と言い、電話を切った。

それから待つこと数十分、日向主任は慌てた様子でわたしの元へ駆け付けてくれた。

「野花さん······」
「仕事中だったのに、LINEしてしまって、すいません······」

わたしが俯きながらそう言うと、日向主任はわたしの向かい側ではなく、わたしの隣に腰を掛けた。

「そんな事、気にしなくていいよ。」

そう言って、日向主任はわたしに寄り添うような姿勢を見せてくれる。

そんな日向主任の優しさを感じ、自然と涙が零れ落ちるわたし。

(あれ、わたし······泣いてる。)

涙を流したのはいつぶりだろう。
わたし、まだ泣けたんだ。

「日向主任···、少しの間だけでいいので、肩···借りてもいいですか?」

わたしがそう訊くと、日向主任は「いいよ。」と優しい口調で答え、わたしの頭を大きな手のひらで包み込むと、自分の肩へと寄りかからせてくれた。

その瞬間、一気に涙が溢れ出し、わたしは声を殺して泣いた。

長い髪の毛で自分の顔を覆い隠しながら、わたしは静かに泣いた。

日向主任は何も言わずにただわたしの心に寄り添うように、落ち着くまでそっと静かにわたしを泣かさせてくれていた。
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