陰日向に咲く儚花

看護師さんの言葉にわたしの気持ちがざわつく。

(ご主人?まさか、竜介が来てるの?)

よく考えれば、それは当然だ。
離婚を決断したとはいえ、まだ既婚状態。

わたしが倒れて病院に運ばれれば、必然的に竜介に連絡が行ってしまう。

(会いたくない·····、顔も見たくないのに······)

すると、カーテンの向こう側から足音が近付いてきて、閉まるカーテンがシャッと音を立てて開いた。

その開いたカーテンの間からは、怒りで眉間にシワを寄せ、わたしを睨み付ける竜介の姿が見えた。

竜介はカーテンの内側に入って来るとカーテンを閉め、乱暴な足取りでこちらへと近付いて来ると、わたしの横へ立ち、わたしのことを見下ろした。

「···お前、何してくれてんだよ。」

低く唸るように言う竜介の声。

竜介はわたしに言いたい事が山程あるようで、何から言ってやろうかというような様々な怒りを感じる表情を浮かべていた。

「お前、今までどこに居やがった?!2日前から帰って来もしないで!俺の飯も無ければ、洗濯もしねーから着るもんなくなって来てるんだぞ!部屋だって荒れて来てるし、全部お前の仕事だろ!」

竜介の口から出て来るのは、全て自分のことばかり。

俺の飯?着るものがない?部屋が荒れてきた?
全部自分で出来る事ばかりじゃない?

(あなたはいつまで赤ちゃんのままでいるつもりなの?)

「しかも、職場で倒れるとか何してんだよ!"奥さんを休ませてあげなさい"って、俺が言われたんだぞ?!お前が倒れたのは、俺のせいみたいじゃねーかよ!フルで働いてるのに、実は家の事も全部やらせてるんじゃないかとか噂されるし、こっちはいい迷惑だ!」

また自分の心配ばかり。
わたしの心には、竜介の言葉など何も響いてこなかった。

「噂じゃなくて、本当の事じゃない。」

わたしが表情一つ変えずにそう言うと、わたしの言葉は竜介を逆撫でしてしまったようで、竜介の表情は更に鬼のような形相になっていった。

「テメェ!!!俺を馬鹿にするのもいい加減にしろよ!!!」

竜介が騒いでいると、その声の大きさから看護師さんたちが駆け付けてくれ、竜介を止めてくれた。

「野花さん、ここは病院ですよ?お静かにしてください。それに奥様には休養が必要な状態です。そのような暴言はお控えください。あまり騒ぐと、警察を呼びますよ。」

看護師さんに注意されると、突然表情を緩ませ急に小さくなる竜介。

竜介は「いや、申し訳ありません。あまりにも出来の悪い嫁なもので······」と言うと、駆け付けてくれた看護師さんたちペコペコし始めたが、今の暴言を聞かれていた上にモラハラ発言までして、看護師さんたちはかなり引いていた。

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