陰日向に咲く儚花
「奥さん、ごめんなさいね。ご主人連れて来ない方が良かったわね。今、向こうに連れて行きますから。」
そう言って、竜介を連れ出そうとしてくれる看護師さんたち。
しかしわたしは、「ちょっと待ってください。」と看護師さんに声を掛けた。
「主人に、一言だけ言わせてください。」
わたしがそう言うと、看護師さんたちは顔を見合わせ、竜介から手を離した。
「竜介···、わたしと離婚してください。」
その後は、もう大変だった。
わたしの言葉でブチギレた竜介は病院で暴れ、結局は警察を呼ばれてしまったようだ。
看護師さんたちからの証言で、竜介は普段から暴力的な事を繰り返しているのではないかと疑われ、警察へ連行されるはめになり、わたしは病室で警察から事情聴取をされた。
そしてわたしは病室で休ませてもらった後、病院側で呼んでくれたタクシーに乗り慈さんの家に帰宅した。
帰宅出来たのは、夕方から夜に変わる19時頃。
(何だか、長い一日に感じたなぁ。)
そう思いながら、わたしはリビングのソファーに座り、ぼんやりとしていた。
しかし、竜介には離婚したい意思を伝えられた。
まだ話し合いは必要だが、離婚の意思を伝えられただけでも大きな一歩に感じた。
きっと離婚を伝えるタイミングは、あの時が最善だったと思う。
周りに誰も居ない竜介と二人きりの状態だったら、何をされていたか分からない。
とりあえず、わたしは病院から一週間の自宅安静を命じられた為、職場に電話をし、ハード主任の木浦主任にその旨を伝えた。
木浦主任は基本的には優しい人なので、「こっちは何とかしますから、一週間ゆっくり休んでくださいね。」と言ってくださった。
「ありがとうございます。ご迷惑おかけして、申し訳ありません。」
「いえ······、野花さんがこうなってしまうまで無理をさせてしまった俺が悪いので。野花さんに甘え過ぎてしまいました。こちらこそ、申し訳ないです。」
木浦主任の声色は何だか暗く、落ち込んでいるように感じた。
わたしは「一週間しっかり休んで、また頑張りますので、それまでよろしくお願いします。」と伝えると、木浦主任との電話を終えた。