陰日向に咲く儚花
(一週間も自宅安静かぁ···、売場大丈夫かなぁ。橋口さんには、負担かけちゃうなぁ。)
一人の時間に考えてしまうのは、やはり仕事の事ばかり。
メッセージカードの返品作業はどうなったんだろう。
新しいメッセージカードは陳列出来ただろうか。
明後日発売のキャラクターくじは誰が出すんだろう。
大型家電の承りは、誰がするんだろう。
ゲームの予約件数の入力は······
わたしは、仕事の事が心配で気になって仕方がなかった。
業務自体は山程あって、日々忙しく余裕がないわたしだが、何だかんだ仕事が好きでやり甲斐を感じているのだ。
そんなわたしの横では、先程からスマホが鳴り続けている。
着信相手は、竜介と義母だ。
竜介は"離婚"についての文句が言いたいのだろう。
そして義母は、竜介の事で警察から連絡がいき、それがわたしのせいだと説教がしたいのだろう。
竜介と義母が言う事はいつも同じでもう分かりきっている為、電話になど出る気になれない。
(離婚の話をする時も弁護士さんか、誰か第三者に入ってもらわないと話し合いにならないだろうな。)
そう思いながら、わたしは先程からうるさいスマホを手に取ると、竜介と義母の電話番号を着信拒否設定にした。
すると、玄関のドアが開閉する音が聞こえてきて、急いで歩いて来る足音が廊下に響く。
そして、リビングのドアが開くと、心配そうな表情を浮かべる慈さんが帰宅して来た。
「菫さん、大丈夫?!」
そう言いながら歩み寄って来る慈さんは、わたしの傍までやって来て隣に腰を掛けた。
「はい、病院で点滴をしてもらって身体も休ませたので、だいぶ良くなりました。でも、一週間の自宅安静が必要だって言われちゃいました。」
「当然だよ。とりあえず一週間はゆっくり休んで!家の事は俺がやるから、何もしなくていいからね!」
「え、家に居るので家事くらいは、」
「ダメだよ!それじゃ、自宅安静にならないから!」
真面目な表情でわたしを説得しようとする慈さん。
わたしはそんな慈さんの説得に折れ、「分かりました。じゃあ、よろしくお願いします。」と言った。
「うん!任せて!···あ、でも一つだけ出来ないことが······どうしよう。」
突然困惑したような表情を浮かべる慈さんは、腕を組みながら何かを考え込むような仕草をした。
わたしが「何ですか?」と訊くと、慈さんは申し訳なさそうに「菫さんの···そのぉ、洗濯が······」と言い、わたしは慈さんが言いたい事を理解した。