陰日向に咲く儚花
「あぁ、わたしの下着って事ですか?それくらい自分で洗いますよ。」
わたしが静かに笑いながらそう言うと、慈さんは「本当に申し訳ない!」と何も悪くないのに謝ってきた。
それから慈さんは早速キッチンに立つと、わたしが食べやすいようにと野菜と玉子の雑炊を作ってくれた。
いつも自分が作る側だった為、誰かに料理を作ってもらえる事が嬉しく、わたしは食べる前からウキウキしていた。
「慈さん、料理出来るんですね。」
「いや、こんなの料理が出来るうちに入らないよ。」
「そんな事ないですよ。誰かにご飯を作ってもらうって、こんなに嬉しいものなんですね。」
わたしはそう言って、目の前に置かれた慈さん作の雑炊を見つめた。
「こんなもので喜んでもらえるなら、いつでも作るよ。熱いから気を付けて食べてね。」
慈さんはそう言うと、丼ぶりに入った雑炊をお椀に掬い入れ、それをわたしに差し出してくれた。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。じゃあ、いただきます。」
そう言ってお椀を受け取ったわたしは、レンゲで雑炊を掬い上げると、フーフーと息を吹き掛け冷ましてから、雑炊を口の中へと運んだ。
それでも熱々の雑炊に口の中が火傷してしまいそうになったが、優しい雑炊の味が口の中に広がり、心にまで染み込んでいくのを感じた。
「美味しい。」
「本当?良かった。」
「身体が弱ってる時は、この雑炊を食べれば元気になれそうです。」
「ははっ、それは毎日作らなきゃなぁ!」
そんな会話をしながら、わたしは少しずつ雑炊を食べ、慈さんは雑炊を食べるわたしの姿を微笑ましそうに眺めていた。
「明日からお休みいただいちゃいますけど、よろしくお願いします。本当に申し訳ありません。」
わたしがそう言うと、慈さんは「そんな事、気にする必要ないよ。俺もステーショナリーの仕事はフォロー入るから。」と言って、わたしを安心させようとしてくれた。
「木浦主任にも連絡して、気にしないでくださいって言ってもらえましたけど、やっぱりどうしても気になってしまって······」
「菫さんは責任感が強いからね。そう思っちゃうよね。」
「何かあれば連絡ください。一応、頭の中には業務スケジュールと把握してある内容は入ってるので。」
「それじゃあ、頭が全然休まらないじゃん。でも、本当に困った時は申し訳ないけど、頼らせてもらうかもしれない。」
慈さんはそう言ってくれたが、本当はそんな事をするつもりがない事は分かっていた。
ただ、わたしの気持ちを汲み取ってそう言ってくれたのだろう。
本当に慈さんは、人の気持ちを考え、気の使える優しい人だ。
わたしはそう感じながら、雑炊を一粒残らず完食した。