陰日向に咲く儚花

そして元の日常に戻ったわたしだったが、仕事の合間には弁護士の佐倉さんと連絡を取り、離婚に向けての話し合いを進めていた。

その間も勿論、竜介と義母からの着信拒否設定は解除していない為、連絡がくる事はなかったが、相変わらずLINEのメッセージは届いていた。
LINEをブロックしなかったのは、ギリギリまで竜介からのモラハラ発言の証拠を集め、その都度佐倉さんに見せる為だ。

『俺は離婚なんて認めないからな!』
『ちょっと倒れて病院に運ばれたからって、一週間も休みやがって!悲劇のヒロイン気取りか?!』
『子ども一人すら産めないくせに調子に乗るなよ!こっちだって、訴えてやるからな!』

何もしなくても証拠を増やしてくれるだなんて、竜介には危機感というものが無いのだろうか。



***



そんなある日の休憩時間。
わたしはいつものように小休憩を取った後、事務室で仕事をしていた。

(次のキャラくじ、どのくらい売れるかなぁ。人気があるタイトルではあるけど、あまり多過ぎて在庫になるのも困るし······)

わたしはそんな事を考えながら、秋頃に発売予定のキャラクターくじの納品希望のロット数を入力していた。

すると、ドンドンと乱暴な足音が聞こえてきたと思えば、その足音が近付いて来て、わたしのすぐ傍で止まった。

「おい、菫。」

そう話し掛けてきたのは、最近まともに会話もしていなかった竜介だった。

竜介は険しい表情を浮かべ、すぐ横でわたしの事を見下ろしている。
その様子を見るに、どうやら竜介の元に内容証明が届いたのだろう。

「何でしょうか。」
「ちょっと話がある。」
「じゃあ、ここでどうぞ。」
「こんなとこで出来るような話じゃない!」

突然大きな声を出す竜介に、事務室内に居た人たちの視線が竜介に集まる。

竜介の荒々しい口調と態度に周りの人たちは驚いていて、竜介本人も慌てていたが、わたしにとってはそれが竜介の本性なので、見慣れた竜介に特に驚きもしなかった。

「···あれは、どういう事だよ。」

自分への危機に小声になって話し出す竜介。

わたしはパソコンから視線を外す事なく、「あれって、何ですか?」と冷静に返した。
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