陰日向に咲く儚花
「昨日、届いたんだよ。お前が送った···その、内容証明······」
段々と小さくなっていく竜介の声。
それでもきっと、周りの人たちは耳を澄ませて竜介の情けない声を聞き取ろうとしているのが感じ取れた。
「無事届いたんですね。そこに書かれている通りなので、わたしから話す事はありません。何かあれば、弁護士を通してください。」
わたしがそう言うと、竜介は怒りと恥を混ぜたような表情を浮かべようとしていたが、場所が場所なだけに平然を装おうとしていた。
わたしが出した"弁護士"というワードに周りの人たちがざわめき始める。
そこに居づらくなった竜介は、何か言いたそうではあったが、怒りを込めた拳を握り締めながら、事務室から立ち去って行った。
竜介に内容証明が届いたという事は、きっと沙瑛さんのところにも届いている頃だろう。
これから本格的にわたしの戦いが始まる。
しかし、わたしは何も怖くはなかった。
わたしが竜介に送った内容証明はこうだ。
まず、"不貞行為"、"モラハラ"、"経済DV"を理由に離婚を申し出た。
慰謝料は全て合わせて500万円を請求した。
条件としては、離婚に応じ、提示した慰謝料を一括で支払えば、こちらが握っている"不貞行為"と"モラハラ"に関する証拠はわたしの中に留めておくが、応じなかった場合は、"不貞行為"と"モラハラ"の証拠を本社に告発するというものだった。
世間体が大事な竜介の事だ。
本社に告発される事を恐れ、こちらの条件には応じてくるだろう。
しかし、厄介なのが義母の存在だ。
そこを見越して、わたしは義母からの"嫁イビリ"に関する証拠も取ってある為、条件に応じなかった場合は、義母へも慰謝料を請求する他、"嫁イビリ"の証拠を世間に晒す事も記載していた。
沙瑛さんに関しては、竜介と不倫関係にあった事から慰謝料を300万円請求している。
向こうがどう出てくるのか···――――
まだ分からないが、わたしには勝つ自信しかなかった。