陰日向に咲く儚花
その日の夜、わたしのスマホに佐倉さんから連絡があった。
どうやら、竜介から佐倉さんに連絡があったらしく、佐倉さんを通して「離婚については、直接会って話したい」と伝えてきたのだ。
しかし、わたしは竜介と直接会って話す気など無い。
佐倉さんには、断っていただくように伝えた上で、こちらの条件を呑んでもらえないのであれば内容証明に記載してある"応じれなかった場合"を即実行する事を強調して欲しいとお願いした。
すると、佐倉さんはすぐにその旨を伝えてくれたのか、竜介は大人しくなった。
毎日のように大量に届いていたメッセージがパタリと無くなり、職場でも話し掛けてくる事はなくなった。
こちらが握っている物を周りに開示されるのが、余程恐ろしいのだろう。
それから一週間以内には、竜介は義母の付き添いのもと、佐倉さんと直接会って話をしたらしい。
佐倉さんの話によると、義母は「さっさと菫さんと離婚をして、早く若い彼女と再婚しなさい!それで早く子どもを産んでもらいなさい!」と竜介に言っていたようだ。
若い彼女···――――
義母は、竜介が沙瑛さんと不倫していた事を知っていたのだろうか。
その辺の詳細は分からないが、それはこの際どちらでも良い。
義母の後押しもあり、竜介は意外とすんなり離婚に承諾し、慰謝料も一括で支払う約束をしてくれたようだった。
(もっと手こずるかと思ったけど、意外とあっさり終わったなぁ。)
わたしはそんな事を考えながら、佐倉さんを通じて受け取った、竜介が記入済みの離婚届を役所に提出し、受理してもらい、竜介からの慰謝料の振り込みを確認しに銀行へと向かっていた。
意外にも呆気なく終わった竜介との結婚生活。
かなり身構えていただけに拍子抜けしてしまった部分もあるが、無事に離婚出来たことにわたしはホッとした。
しかし、離婚をして旧姓に戻ると、やらなくてはいけない事がたくさんあり、正直それがかなり面倒だった。
それでも"野花"から離れられた解放感の方が強く、わたしは閉じ込められていた鳥籠から脱出できたような気分だった。