陰日向に咲く儚花
帰りの車の中、わたしたちはお腹も満たされ、気分よく他愛もない話をしていた。
それから自宅マンションの駐車場に着くと、シートベルトを外し、車から降りようとするわたし。
その時、突然慈さんが「菫さん、ちょっと待って。」と穏やかな声でわたしを呼び止めた。
わたしは驚き、車のドアを開けようとしていた手を止める。
そして、ふと運転席に居る慈さんの方を向くと、そこには花束を手に持つ慈さんの姿があった。
「えっ···、えっ?」
驚くわたしを見つめる慈さんは、真っ赤な薔薇に純白のかすみ草が束ねられている花束を持ちながら、落ち着いた口調でこう言った。
「菫さん、もう一度···きちんと言わせてください。俺と···、結婚を前提にお付き合いしてください。」
そう言って慈さんは花束をわたしに差し出した。
わたしは突然のサプライズに驚きながらも花束を受け取ると、「はい、よろしくお願いします。」と返事をした。
そして、改まっていう言葉に何だか照れくさくなり、お互いに照れ笑いを浮かべるわたしたち。
わたしは花束を眺めると「凄い、薔薇の花束なんて初めて貰いました。」と言って、花束を抱き締めた。
「そうなの?俺が初めて?」
「はい、初めてです。」
「うわぁ〜!めっちゃ嬉しい!菫さんの"初めて"いただきました!」
そう言いながらガッツポーズをする慈さんは、きっと照れ隠しをしているのだと思った。
それから花束を抱えて自宅に入ると、わたしはすぐに大きめの花瓶に花束を生けた。
「どこに飾ろうかな?」
そう独り言を呟きながら、薔薇を飾る場所に迷っていると、慈さんが「ここは?」と対面キッチンのカウンターに置く事を提案してくれた。
「いいですね。ここなら、どこに居ても目に入りますね!」
そう言いながら、花瓶に生けた薔薇を対面キッチンのカウンターに飾るわたし。
慈さんはそんなわたしの隣に立ち、二人並んで薔薇を眺めては、顔を見合わせて微笑んだ。