陰日向に咲く儚花
「でもこの花束、いつ用意したんですか?」
「さっき、菫さんが役所で色々手続きしてる間に近くの花屋に行って買って来たんだ。バレちゃわないかドキドキしたよ。」
「全然気付かなかったので、めちゃくちゃ驚きましたよ!」
そう話しながら、わたしたちはリビングのソファーに並んで腰を下ろした。
離婚祝いにと焼肉をご馳走してくれた、それだけでも嬉しかったのに、わたしの為に花束まで用意して、正式な結婚を前提とする言葉も伝えてくれた。
慈さんは、どこまで素敵な人なのだろうか。
「あのぉ、慈さん。」
「ん?なに?」
「離婚して、正式にお付き合いしたら、言おうと思っていた事があるんですけど······」
わたしがそう言うと、慈さんは不思議そうな表情を浮かべ「えっ、何?」と言った。
「わたしたち、婚約者になったわけですし······、そろそろ同じベッドで寝ませんか?」
わたしがそう伝えると、慈さんは一瞬だけ固まり、そのあと「え、えぇ?!」と大袈裟という程に驚いていた。
「だって、わたし、ずっと寝室を独り占め状態だったんですよ?さすがに、もう······」
「いや、それは仕方なかったから!」
「でも、もう仕方なくないですよね?ここ数ヵ月ずっと、慈さんはソファーで寝てたわけじゃないですか?ソファーで何てちゃんと身体休まらないですよ。」
慈さんはわたしの言葉に何と言い返そうか迷っているように見えた。
そこにわたしはもう一押しの言葉を慈さんに伝えた。
「わたしは···、慈さんと同じベッドで寝たいです。」
わたしのその言葉に、微かに頬を染める慈さんは困ったような表情を浮かべながらも「本当に、いいの?無理してない?」と言った。
「無理なんてしてないです。それに···、わたしは慈さんからの結婚を前提としたお付き合いの告白に、OKしたんですよ?それは約束していたからとかじゃなくて···、そのぉ···、わたしも、慈さんに···惹かれているからであって······」
わたしがそこまで言うと、慈さんはやっと納得してくれたようで「菫さん、ありがとう。」と言い、照れながらも嬉しそうに微笑んでくれた。
「あー、どうしよう!菫さんが可愛すぎる!」
そう言って、また自分を抱き締め出す慈さん。
そんな慈さんを見て、クスッと笑ったわたしは、慈さんに向けて両手を広げた。
「抱き締めるなら、自分じゃなくて、わたしを抱き締めてください。」
わたしがそう言うと、慈さんは驚いた表情でわたしを見た。
自分でも大胆な事を言っている自覚はある。
でも、わたしも慈さんと気持ちであり、本心から抱き締めて欲しかったのだ。
「じゃあ···、失礼します。」
慈さんはそう言うと、自分を抱き締める腕を緩め、わたしが広げる腕の中へ入り込んでくると、優しくわたしを包み込み抱き締めてくれたのだった。