陰日向に咲く儚花

その後、わたしが"あの後"どうなったのかを知ったのは、慈さんが帰宅した19時頃だった。

「ただいまぁ〜。」

いつもと変わらぬ様子で帰って来た慈さん。
わたしは慈さんに駆け寄ると、「ゲームの件、どうなりました?!」と、「おかえりなさい」を言うのも忘れて必死に尋ねた。

「菫さんの事だから、ずっと気になってたんでしょ?せっかくの休みだったのに、気が休まらなかったんじゃない?」

まさにその通りの事を言い、わたしをソファーへと促す慈さん。

そしてソファーに座ると、慈さんは「大丈夫だよ。無事解決したから。」と、わたしを宥めるように言った。

「それなら良かったですけど···、ゲーム入荷になってなかったんですか?」
「んー、それがね、佐山急便が持ち帰ってて、入荷になってなかったんだよ。」
「えっ?!持ち帰ってた?!」

佐山急便は、いつも納品してくれる運送会社だ。

「佐山急便に確認したら、商管に誰も居なかったから持ち帰ったって言っててさ。」

"商管"とは、商品管理部の事であり、佐山急便を含む運送会社の人たちは、必ず商品管理部に直接入荷商品を渡し、受け取りサインをする事になっている。

しかし、昨日はそのゲームの納品時に商品管理部の窓口が無人状態だった為、仕方なく持ち帰り納品出来なかったという事だったのだ。

「そんな···、それで入荷されてなかったなんて······」
「まぁ、持ち帰るのもどうかと思うけど、商管が無人状態ってのも問題だよな。」
「木浦主任は何て言ってました?」
「え、木浦くん?何も知らない感じだったよ。」
「えっ?」
「一応、分からないだろうなぁとは思ったけど、ハード主任だし、訊いてみたら、ゲームの発売日な事も入荷になる予定だった事も知らないみたいだった。」

慈さんの言葉に、わたしは(嘘でしょ?)と信じられない気持ちになる。

昨日わたしが残したメモを見てくれなかったのだろうか。

「昨日わたし、帰る時にまだゲームの入荷がなかったから、木浦主任にメモ残してたんですよ?"わたしが帰った後のゲームの入荷確認お願いします"って。」
「えっ、そうなの?メモの事、何も言ってなかったけどなぁ······」
「木浦主任が3階に来て引き継ぎノートを見る事は無いと思ったから、事務室には必ず寄ると思って、パソコンのところにメモを貼って置いたんです。」

わたしはそう言ったが、慈さんは木浦主任からそのような話は聞いていないという感じだった。

何だかモヤモヤが晴れず、わたしは納得出来ない部分はあったが、慈さんは「まぁ、無事に済んだ事だし、もうこの話はやめよう!」と気持ちを切り替えるタイミングを作ってくれ、その後にピザを注文して二人でお腹を満たしたのだった。
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