陰日向に咲く儚花

しかし、その件については"無事解決した"で終わりではなかった。

次の日わたしが出勤すると、まず最初にホームファッションの平川さんが声を掛けてきた。

「菫ちゃん、おはよう!」
「おはようございます。」
「昨日、大変だったんだよ〜?お客様がゲーム取りに来たのに、入荷になってなくてさぁ!」
「あ、はい···日向主任からどうなったかは聞きました。」

わたしがそう言うと、いつもはそれほど棘のある言葉を言わない平川さんが「菫ちゃん、ちゃんとみんなに謝った方がいいよ?特に日向主任には。昨日、ゲームが見当たらないからって、近隣店舗に在庫確認してすぐに取りに行ってくれたんだから!」と言ったのだ。

「え、日向主任が?」

平川さんの言葉から初耳な情報が入る。

(慈さんが近隣店舗に取りに行ってくれた?昨日そんな事、一言も言ってなかったのに。)

「日向主任は優しいから対応してくれたけどさ、一応ホームファッション主任だからね?それに福西さんなんて、めちゃくちゃ怒ってたよ?」

平川さんの話を聞いていると、わたしが思っていたよりも大ごとになっていたのだと知り、自分を責める気持ちが湧き上がってくる。

わたしは、あの時、どうするのが最善だったのだろう···――――

その後も違う部署の人や顔見知りの警備さんにも「昨日大変だったんでしょ?」と言われたり、福西さんからお叱りを受け、吉光さんからは「日向主任が居てくれて良かったね!」などと言われた。

それから同じ部署で仲間のはずのサイクル社員である瀬尾(せお)さんからは「みんなに迷惑かけたんだし、気を付けた方がいいよ。」と言われてしまった。

全責任がわたしにのし掛かってくるのを感じ、気持ちが滅入ってくる。

そして、そこにトドメをさしてきたのは、森田さんだった。

「入荷確認もしないで帰って、どうするつもりだったの?お客様には勿論だけど、こっちにまで迷惑かけておいて、よく平気な顔して出勤して来れたわね。日向主任に感謝しなさいよね!」

わたしはその言葉に何も言い返す事が出来ず、ただ頭を下げ「申し訳ありませんでした。」と謝る事しか出来なかった。

確かにゲームは"ステーショナリー"の担当である事に間違いない。
しかし、"ハード"の担当であって、本来であれば主任は勿論"サイクル"の人たちもノータッチで良い事ではないはずなのだ。

しかし、サイクルも忙しいのは承知で、サイクルに負担がかからないように"ステーショナリー"だけで何とか頑張ろうと必死にやって来た。

そう思って必死にやって来たはずだったのだが、今回の事でわたしは孤独を感じた。

"ステーショナリー"は、"ハード"担当は、わたし一人しかいないのだろうか···――――

< 66 / 114 >

この作品をシェア

pagetop