陰日向に咲く儚花

それからわたしは、1階のサイクル売場まで行くと、丁度自転車修理をしていた木浦主任に昨日の事を謝った。

すると木浦主任は「いえ、何も把握出来ていなかった俺の責任でもあるし···、野花さん、あ、いや、森崎さんの責任じゃありませんよ。」と言ってくれた。

「そういえば、木浦主任。わたし2日前の帰りに、木浦主任にメモを残して帰ったんですけど、見ましたか?」

わたしがそう訊くと、木浦主任は何の事が分からない様子で「メモ?どこにですか?」と言った。

「すぐ目に付くようにハードのパソコンに貼っておいたんですけど······」
「え、パソコン?2日前···、帰りは必ず事務室に寄りますけど、メモのような物は特に見てないですね。」

木浦主任の言葉に違和感を感じるわたし。

わたしは付箋だと剥がれる恐れがあると思った為、もう必要なくなったポップの裏に引き継ぎを書き、セロテープでパソコンに貼り付けていたのだ。

それを見ていない?···――――

しかし、態度に出やすい木浦主任が嘘をついているようには見えず、わたしはそれ以上訊くのを止め、3階の売場へと戻った。

売場に戻ると、出勤して来たばかりの慈さんが福西さんと話している姿が見えた。

どうやら、昨日のゲームの件について話しているようだった。

「こっちに迷惑かかるんだから、ちゃんと注意しておいてよね?日向くんは菫ちゃんに甘いんだからぁ。」
「いや、でも、あれはハードの問題で森崎さん一人に責任を押し付けるのは違うと思うから。」
「でもいつもゲーム担当してるのは菫ちゃんでしょ?それなら、菫ちゃんのミスじゃない?!」

福西さんの怒りは収まっておらず、わたしに説教をし足りなかったのか、慈さんにまであーだこーだと愚痴を零していた。

(慈さんに申し訳ないなぁ···、あとでちゃんと謝ろう。)

わたしはそう思いながら、文具売場で品出しをしていた。

すると、福西さんと話し終えたのか「おはよっ。」と慈さんが文具売場に顔を出しに来た。

「おはようございます。」
「あれ?菫さん、何か元気ない?」

わたしの様子にすぐ気付いた慈さんがそう言う。

わたしは品出しをする手を止めると、慈さんに「昨日、近隣店舗までゲームの在庫もらいに行ってくれてたんですね。」と言った。

「あぁ、もしかしてそんな事気にしてるの?」
「だって、そんな事一言も言ってなかったし···、申し訳ないですよ。」
「俺は、自分に出来る事をやっただけだよ。」

そう言って慈さんはわたしを励まそうとしてくれたが、わたしの罪悪感が消える事はなく、慈さんはそんなわたしに「帰ってから、ゆっくり話そう?」と言ってくれ、とりあえずわたしたちはそれぞれの仕事に戻ったのだった。
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