陰日向に咲く儚花

そして16時の休憩時間。
わたしはいつものように野菜ジュースで小休憩を取った後、事務室へと行った。

そこで念の為、ハード専用のパソコンを確認したが、確かにわたしが残したはずのメモは見当たらず、周りにも落ちている形跡もなかった。

(おかしいなぁ···、どこいっちゃったんだろ。)

そう思いながらデスクにつき、ふと視界に入ったのは、ハードとホームファッションのデスクの間に置いてあるゴミ箱だった。

わたしは(まさかなぁ。)という軽い気持ちもあったが、ゴミ箱の中を確認してみた。

すると···――――

「······あっ。」

そこには、わたしが2日前にパソコンに貼り付けたはずの木浦主任宛てのメモがクシャクシャに丸まって捨てられていたのだ。

「何で······」

(一体、誰がこんな事を·····)

こんな事をしそうな人···――――

心当たりはあるが、そんな証拠はどこにも無い。
とりあえずわたしは、それを慈さんに見せる為に、自分のポケットに入れ、持ち帰る事にしたのだった。

それから、わたしはいつも通り、本社からの作業指示書の印刷をし、事務室でしか出来ない業務をしていた。

そんな時、事務室に少し久しぶりに姿を見る沙瑛さんが衣料の主任である柿沼(かきぬま)主任と一緒に入って来た。

「え、沙瑛ちゃん結婚するの?!」

柿沼主任の口から発せられたワードにわたしはつい反応してしまう。

(結婚?って、まさか······)

わたしが何も聞いていないフリをしながらそう思っていると、喜びを抑えきれない様子の沙瑛さんが「はい、次の休みの時に二人で婚姻届を出しに行く予定で。」と話していた。

「じゃあ、柴原さんから野花さんになるんだね〜。」
「まぁ、はい、そうですね。」

それを聞き、わたしは初めて竜介が沙瑛さんと再婚する事を知る。

わたしと離婚してから、まだ約2ヵ月程しか経っていないというのに、もう再婚するようだ。

わたしは竜介の再婚話に怒りや嫉妬などを感じたわけではない。

ただ(離婚して間もない相手との結婚話をよく出来るなぁ。)と、まるでわたしから竜介を勝ち取ったかのように誇らしげに話す沙瑛さんの姿に感心してしまったのだ。
< 68 / 114 >

この作品をシェア

pagetop