陰日向に咲く儚花
「慈さん。」
「んー?」
「昨日は···、本当にありがとうございました。」
わたしがそう言うと、慈さんは涙を手の甲で拭いながら「何が〜?」と言い、自分は何もしていないような雰囲気を出した。
「慈さんがすぐに対応してくれてなかったら···、どうなってたか·····。本当に助かりました。わたしのせいで···」
とわたしが言いかけたところで、慈さんは「菫さんのせいじゃないでしょ?」と優しい口調で言ってくれた。
「でも······」
「何か、色んな人にあーだこーだ言われたみたいだけど、俺は菫さんの責任だなんて思ってないよ。本来であれば、ハード全員で把握しておかないといけない事だしね。それを全部、菫さんに押し付けてる普段の体制から間違ってるんだよ。」
慈さんはそう言うと、玉ねぎを切り終え、次にピーマンを手に取った。
「あとさ、俺も反省したよ。俺が菫さんを支えるだなんて、かっこつけといて、肝心な事抜けてるんだからさ。同じレジカウンター使ってるんだから、俺もステーショナリーの事は把握しておくべきなのに。」
「そんな、慈さんが反省する必要ないじゃないですか。」
「いやいや···、口で言ってるだけで行動に移せてないだなんて、男としてかっこ悪過ぎだよ。ごめんね、菫さん。」
そう言う慈さんの言葉に涙が潤んできてしまうわたし。
この人は、どこまで優しくて思いやりがある人なんだろう。
「え、どしたの?また玉ねぎ染みた?」
「違いますよ。慈さんが······優しい事、言うから。」
わたしがそう言い俯くと、慈さんは優しく微笑み、一度ピーマンを切る手を止め、手を洗ってからわたしを抱き寄せた。
「そんなに自分を責めないで?俺は、菫さんの味方だよ。」
「···ありがとうございます。」
わたしは抱き締めてくれる慈さんの背中に腕を回した。
温かくて大きな慈さんの背中。
わたしは慈さんの身体に響く心臓の鼓動を聞き入るように、自分の顔をピッタリと慈さんにくっつけた。
「あ、そういえば。」
わたしはそう言うと、ふと慈さんを見上げた。
「今日、ある物を拾って···、慈さんに見せたくて持って帰って来たんです。」
「ん?ある物?なに?」
わたしは一度慈さんから離れると、ソファーの上に置いてある自分のバッグのところまで行き、バッグの中から"ある物"を取り出して、再び慈さんの元へ戻った。
「これです。」
そう言って、わたしは慈さんにクシャクシャになった四つ折りにしてある紙を差し出した。