陰日向に咲く儚花
あの日以降、わたしの心の靄が完全に晴れたわけではないが、あの件に関して話す事はやめた。
わたしが落ち込み続けたところで、わたしが書いたあのメモを捨てた人が誰なのか分かる事も無ければ、あの日をやり直す事も出来ない。
ただ、わたしには慈さんが居てくれる。
その心強さがわたしをしっかりと真っ直ぐ前を向けるようにさせてくれた。
それからその数日後、社内はまた別の話題である意味盛り上がる事となった。
「柴原さん、野花課長と結婚したらしいよ。」
仕事中、バックルームで聞こえてきた、衣料の人たちの話し声。
(あぁ、やっぱり竜介、沙瑛さんと再婚したんだ。)
「え、そうなの?!」
「二人で婚姻届出してきたって、嬉しそうに柿沼主任に話してたよ。離婚したばかりの人とすぐに結婚だなんて、不倫してたんじゃない?」
「あぁ〜、あり得る。だから離婚されたんじゃないの?野花課長。」
わたしが開示しなくとも、自然と周りに広がっていく竜介と沙瑛さんが"不倫してたのでは?"という噂話。
まぁ、単なる噂ではなく真実なのだが···――――
すると、噂好きなおばちゃんが黙っているわけもなく、ギフトコーナーから吉光さんがわたしの元へすっ飛んで来た。
「ちょっとちょっと!菫ちゃん!」
「あ、吉光さん。お疲れ様です。」
「お疲れ様〜!菫ちゃん!野花課長、衣料の柴原さんと再婚したんだってぇ?!」
「そうみたいですね。」
「もしかして、不倫してたんじゃない?!離婚理由って、野花課長の不倫だったの?!」
容赦無くズバズバとストレートに飛んでくる吉光さんからの質問。
しかし、わたしもストレートに返すわけにもいかず···――――
「まぁまぁ、うちはもう離婚してるので、あとはどうなろうとわたしには関係ないですからね〜。」
わたしはそう言って誤魔化したが、吉光さんは完全に竜介の不倫からの離婚、そして再婚を確信しているような様子だった。