陰日向に咲く儚花
すると、慈さんは身体をこちらに向け、そっと手を伸ばし、わたしの頬に触れてきた。
「···菫さんの口から、そんな事言わせてごめん。でも、本当に···いいの?」
「ほら、またわたしに同じ事、言わせるつもりですか?」
わたしがそう言うと、慈さんは慌てて「あっ、ごめん!」と言い、それから「いや、もう···同じ事を二度言わせないよ。」と静かに言うと、そっとわたしを抱き寄せた。
慈さんの腕の中は温かく、いつもよりも体温が高いように感じた。
しかし、それは慈さんだけではなくわたしも同じで、自分の身体に熱を帯びていくのを感じていた。
そして慈さんは、わたしを抱き寄せた腕を少し緩め、わたしの顔を見つめる。
わたしも慈さんを見上げると、慈さんは優しく穏やかに微笑み、わたしの頬に手を添えると、そっと顔を寄せ、微かに顔を傾けてゆっくりと唇に重ねてきた。
目を閉じると慈さんの唇の柔らかさを感じる。
それから短いキスを何度か繰り返したわたしたちは、再び見つめ合い、お互い照れ笑いを浮かべた。
「何か、こういうの久しぶり過ぎて···、ぎこちなくてごめん。」
「わたしも久しぶりなので、色々忘れてます。」
わたしがそう言うと、慈さんは「忘れてていいよ。過去の事なんて思い出さなくていい。菫さんの記憶の中は、俺だけにするから。」と言って、わたしに覆い被さると、わたしたちは再び唇を重ねた。
そこからは、本能のままに求め合った。
短いキスから、長く深いキスへと変わり、お互いの体温を感じ取っていく。
慈さんが触れて来る度にわたしの身体は反応し、それが恥ずかしくてわたしはつい顔を背けてしまった。
声を出すのも恥ずかしくて我慢していたが、さすがに慈さんの存在をわたしの中に感じた時には、堪えきれずに声を漏らしてしまった。
「我慢しないで、もっと聞かせて?」
耳元に響く慈さんの声に身体がゾクゾクする。
わたしは慈さんの背中に腕を回し、必死に慈さんを受け止めた。
行為自体は久しぶりだったが、こんなにも心が満たされていくような感覚は初めてで、わたしも強く慈さんを求めた。
長いようで短い時の流れも忘れ、わたしたちは愛し合った。
わたしはこれが本当に"愛し合う"という事なんだと、身を持って実感したのだった。