陰日向に咲く儚花

あの後、すぐに眠ってしまったわたしたち。
わたしが目を覚ました時には、次の日の朝になっていた。

隣には、まだ眠る慈さんの姿があり、わたしはその寝顔をしばらくの間眺めていた。

(今日は、わたしが慈さんの寝顔見ちゃった。)

長い睫毛に、厚すぎず薄くもない程よい唇、ムラがなく灼けた綺麗な肌。

静かな寝息を立てて眠る慈さんを見ていると、愛おしい気持ちがわたしの内側から溢れ出してきそうな程に湧き上がってくるのを感じた。

もう誰かを愛する事なんて無いと思っていた。
愛し方さえ、忘れてしまったと思っていた。

しかし、わたしはしっかりと今、慈さんを愛おしいと思える程に恋をしている――――


そして、次の二人の休みの日が同じ日は、予定通り"IDEA家具"へとベッドを見に行った。

意外にもお洒落なベッドが多く、実際にベッドに横になってみて、二人で寝心地を確かめた。
その中でもわたしたちが気に入ったのは、マットレスの下に収納スペースがついているダブルベッドだった。

在庫を確認してもらうと、在庫は残り1台と言われ、つい即決してしまったわたしたち。

新しいベッドが我が家にやって来るのは一週間後となり、無事に新しいベッドが決まったわたしたちは、"IDEA家具"を出ると手を繋ぎ、デートの続きを始めた。

「いいベッド見つかって良かったね。」
「そうだね。在庫が残り一つなんて言われちゃったら、買うしかなかったよね。」

ちょっと遅めのランチでパスタを食べながらそう話すわたしたちは、あの日以来より仲が深まり、わたしの敬語も無くなれば、お互いを"菫"、"慈"と呼び捨てで呼ぶようになっていた。

ランチの後は慈の車でドライブをし、雑貨屋を見て回ったりとわたしたちはデートを満喫した。

それから夕食を済ませてから夜に帰宅したわたしたちは、あと一週間しか寝る事の出来ない今までお世話になってきたセミダブルのベッドで抱き合ったのだった。

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