陰日向に咲く儚花
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ある夏真っ只中の水曜日。
わたしは売場で発注作業をしていた。
しかし売場の冷房は弱く、汗が滲み出てくる。
(あっつい······、ちょっとバックルームに避難しよう。)
そう思い、わたしはキリが良いところまで発注を済ませると、バックルームへと涼みに行った。
この夏のバックルームは程よく涼しく、熱くなった身体をクールダウンさせるには丁度良いのだ。
そして、わたしがバックルームの陰で家電の在庫をチェックしていると、「あ、あのぉ······」とか細い声が聞こえてきた。
(えっ?)
話し掛けられているのか分からない程に自信が無さげな声にわたしが振り向くと、そこには申し訳なさそうに立つ、沙瑛さんの姿があった。
結婚してから短時間勤務になった沙瑛さんの姿を見る機会が少なくなった為、久しぶりに沙瑛さんの姿を見るが、沙瑛さんは何処と無く元気がないよう見えるだけではなく、心無しか痩せたようにも感じた。
「は、はい。わたしですか?」
わたしがそう訊くと、沙瑛さんは小さく頷き、ゆっくりとわたしの方へ歩み寄って来た。
「突然話し掛けてすいません。わたしなんかに話し掛けられるの···、嫌ですよね。」
「まぁ···、正直気分が良いものではないですね。」
「そうですよね、本当にすいません······」
そう言って頭を下げる沙瑛さん。
謝ってばかりの沙瑛さんに困惑しつつも、わたしは「いえ、別にいいんですけど···、わたしに話し掛けるだなんて、どうしたんですか?」と言った。
すると沙瑛さんは「少しだけでいいので、お話し聞いていただけませんか?」と言ってきたのだ。
「話し?何ですか?」
「実は······、わたし今、妊活をしていて······」
沙瑛さんのその言葉を聞き、ある事にピンときたわたし。
わたしは「もしかして、お義母さんから何か言われたんですか?」と言ってみた。
その途端、沙瑛さんは目を見開き「そうなんです!」と、今にも泣き出しそうに瞳を潤ませていた。