陰日向に咲く儚花

それから売場に戻ったわたしは発注作業を再開させ、それを終わらせると、9月から始まる喪中ハガキの承りと10月から始まる年賀ハガキの販売、承りについての説明会に出席する為に5階の事務室へと向かった。

実はステーショナリーは、通常業務に加え、9月になると喪中ハガキの印刷の承りが始まるのだ。
その上、10月には年賀ハガキ印刷の承り、販売も始まる為、更に忙しくなる。

この時期は目まぐるしい程に忙しくなる為、毎年9月が近付くと憂鬱になってきてしまう程だ。

しかし、業務がプラスされるのはそれだけではない。
その同時期にはカレンダーとダイアリーの売場作り、その後にはクリスマスカードの売場作りもやらねばならず、極めつけには11月に年始の福袋や売り出し準備もやってくる。

次から次へとやってくる仕事の嵐に、身体が幾つあっても足りないと感じてしまう事だろう。

そんな毎年の目まぐるしい忙しさを思い出しながら、事務室のパソコンでZOOMを開き、本社で行われている説明会を聞く。

すると、そんな事務室では竜介が総務の粟屋課長と雑談をしており、また聞きたくもない話題が耳に入ってきてしまった。

「三木主任、ご懐妊だって?おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「粟屋くんもなかなかやるなぁ〜。」
「まぁ、年齢的にも早めに子ども欲しかったんで、頑張りましたよ〜。」
「だから最近、三木主任休みがちなのか。」
「そうなんですよ、悪阻が結構重たくて。」

竜介と粟屋課長の話から、服飾の三木主任の妊娠を初めて知った。

(悪阻重いんだぁ。三木主任、大変だなぁ······)

わたしがそう思っていると、竜介がとんでも無い事を言い始めた。

「でも所詮、悪阻なんて病気じゃないんだから、気の持ちようでどうにかなるだろ。あんまり甘やかすと、妊娠を言い訳に何もやらない嫁になっちゃうぞ?」

平然と自覚無くモラハラ発言をしてしまう竜介に、わたしは(相変わらずだなぁ。)と呆れてしまう。

すると、さすがの粟屋課長も竜介の言葉には苛立ちを感じたようだった。

「いや、確かに悪阻は病気じゃないけど、かなりツラそうだし···、気の持ちようでどうにかなるものじゃないっすよ。」
「いやいや、粟屋くんは甘いなぁ。もしかして、三木主任の尻に敷かれてるのか?」

笑いながら話す竜介の言葉に、粟屋課長も呆れたのか、「そんな事ないですけど···、じゃあ、俺そろそろ仕事に戻りますね。」と言い、総務課のデスクの方へと戻って行った。
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