陰日向に咲く儚花

「ねぇ、慈?」
「ん?」
「ちょっと···、訊きたい事があるんだけど。」

わたしがそう言うと、慈はわたしを抱き締めていた腕を緩め、わたしの顔を見て話を聞こうとしてくれた。

「昨日······、ギフトの小島さんと一緒に帰って来たって、本当?」

その質問を慈にぶつけ、わたしの鼓動はドキドキと身体中に響いた。

すると、わたしを真っ直ぐに見つめる慈が「あぁ·····」と言って、一瞬だけわたしから目を逸らした。

その慈の行動に不安を感じるわたし。

しかし慈は再びわたしの方を見ると、「もしかして、誤解させるような事しちゃったかな。」と言って、少し困ったような表情を浮かべていた。

「実は、森田さんが···慈がギフトの小島さんを車に乗せてたって、平川さんに話してるところを聞いちゃって·······」
「あー、なるほどね。それはごめん!俺がきちんと説明しておけば良かったよな。」
「じゃあ、小島さんを車に乗せたのは本当なの?」
「うん、それは本当。でも、誤解しないで!ちゃんと説明するから!」

慈はそう言うと、誤解を晴らそうとわたしの腕を強く掴んだ。

「実は昨日さ、小島さんが仕事中に貧血で体調悪くなっちゃって···、そのまま一人で帰すのは心配だからって、吉光さんに"小島ちゃんの事、送ってあげてほしい"ってお願いされちゃったんだよ。だから、菫には"帰り遅くなる"って事だけ連絡して、小島さんを自宅まで送って、帰宅してから菫にはちゃんと説明するつもりだったんだ。」

(そうだったんだ······)

慈の話を聞いて納得した後、わたしはふと昨日の事を思い出した。

昨日は、わたしはいつものように帰宅してすぐにソファーで寝てしまい、そのあともまともに慈と会話する時間も取れないまま眠ってしまった。

あれじゃあ、わたしに説明できるわけがない。

「そっか、それは仕方ないね。」
「だから、送ったのは事実だけど、小島さんの体調を心配した吉光さんのお願いで自宅まで送っただけだから!それで、今日小島さんから"昨日はありがとうございました"って話し掛けられたくらいで、本当にそれだけ!」

(そっか、わたしが二人が話してるのを見掛けたのは、小島さんが慈にお礼を言ってただけだったんだ。)

全てに納得が出来たわたしは安堵し、心の靄がスッキリと晴れていった。
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