陰日向に咲く儚花


それから12月に入り、2週目あたりになると、年賀·喪中ハガキの印刷受付もやっと落ち着いた。

受付自体はギリギリまでやっているのだが、この時期になればほとんどの人が受付を済ませている為、申し込みに来るお客様はほとんど居ないのだ。

やっとまともに通常業務に集中出来るようになり、わたしは年明けのワゴンセールの準備をし始めた。

本社の自動納品により入荷されて来た商品は、幼児向けのおたのしみ福袋や、ノートセット、色鉛筆セットなどだ。
正直あまりセンスが良い商品とは言えないが、本社でセレクトされ自動納品されたものなので仕方がない。

すると、わたしがワゴンセールの準備をしているところから、ダイニング売場が見え、そこに慈と森田さんが話している姿があった。

いつも森田さんに捕まっている慈。
今日もいつもの事ではあるのだが、わたしはなぜかそんな二人の姿にモヤモヤしてしまった。

何でだろう、いつもの事なのに···――――

(もしかして、わたし···嫉妬してる?)

慈は、ホームファッション主任だ。
ホームファッションの人たちと話すのは当然の事で、いちいち嫉妬なんてしてしまう方がおかしい。

けれど、森田さんに関しては、仕事以外の話もしていれば、無駄にボディータッチをしてみたり、明らかに慈に好意を寄せた行動を取るのだ。

(慈に触らないでほしい······)

そんな事に少し苛つきながら、わたしは作業を進めていた。

それから作業も終盤に入ると、慈がわたしの様子を見にやって来た。

「菫、お疲れ。」
「お疲れ様です。」

わたしが少し不機嫌そうな雰囲気を出すと、慈はそれにすぐ気付き「何?どうしたの?」と不安そうに言った。

「別に、何でもないよ。」
「何でも無くないだろ。何か怒ってる?」

わたしは慈の言葉に無言で慈を見上げた。

しかし、何でわたしが不機嫌なのか分からない様子の慈。

それは確かに分からないかもしれない。
今まで慈に、森田さんへの嫉妬を口に出して伝えた事が無いのだから。
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