陰日向に咲く儚花
そして、久しぶりの焼肉店に着いたわたしたちは、空腹が欲するままにメニューを注文し、今日も烏龍茶で「お疲れ!」と乾杯した。
それから特上ロースやサガリ、ネギ塩タンなどが運ばれてきて、次々と焼いていく。
慈は一番最初に焼き上がった特上ロースをわたしの皿に置いて「はい、いっぱい食べろよ〜?」と言ってくれた。
「ありがとう。じゃあ、いただきまーす。」
そう言って、特製ダレをつけて丁度良い焼き具合の特上ロースを口へと運ぶ。
そこにライスも一緒に口へ運ぶと、口の中に幸せが広がった。
「んー、美味しいー!」
「ははっ、菫は美味そうに食うよなぁ。」
「だって、本当に美味しいもん。」
「じゃあ、俺も頂こっと!」
「食べな食べな!わたしも焼くよ!」
「大丈夫だよ、俺が焼く係りするから。菫は食べるのに集中して!」
そんなわたしをお姫様扱いをしてくれる慈は、次々とわたしのお皿に焼き上がったお肉を入れていき、わたしはお腹を満たしていった。
すると、お腹も8分目あたりになってきた頃、慈が「あのさぁ、菫。」とわたしの名を呼んだ。
「ん?」
「実はさ、今日この店を選んだのには、理由があるんだ。」
「えっ、そうなの?理由って?」
わたしがそう訊くと、慈は一度トングを置き、烏龍茶を一口飲んでから、改まるようにわたしの方を向いた。
「さっきも言ったけど、ここって俺達が初めて来たお店じゃん?」
「うん、そうだね。」
「その時にした会話は、覚えてる?」
慈の言葉にあの時の記憶を呼び起こす。
(あの時は、竜介の愚痴を聞いてもらって···、離婚を決断するのに背中を押してもらったんだったよね。)
「わたしの愚痴を聞いてもらって、あとは離婚を決意したんだったよね。」
「うん、そう。それでさ、その時に俺が言った言葉があるじゃん?」
慈はそう言うと、わたしを真っ直ぐに見つめ、穏やかに微笑んだ。
「俺と、再婚しようってさ。」