陰日向に咲く儚花
そして次にわたしは、慈の指輪をケースから取り出すと、慈の左手を取った。
「日向慈さん。」
「はい。」
「あなたは、病める時も健やかなる時も、どんな事があっても二人で分かち合い、森崎菫を愛し、日向菫になっても変わらぬ気持ちで愛し続ける事を誓いますか?」
「はい、誓います。」
慈がそう返事をすると、わたしは慈の左手薬指に結婚指輪を嵌め、自分の左手を慈の左手に重ねた合わせた。
結婚指輪が光るそんな重なるお互いの左手を見つめ、それから顔を上げると、微笑み合うわたしたち。
それからどちらからともなく、お互いを抱き寄せた。
「菫、愛してるよ。」
「わたしも、愛してる。」
わたしたちはその日から、毎日結婚指輪を肌見放さず身に付けているようになった。
入籍予定は年を明けてから。
わたしたちの誕生日が1月なので、二人の誕生日の中間に入籍しようと話し合った。
そして、結婚指輪を身に付けたまま出勤するようになったわたしたちだが、周りの人たちは本当によく見ていて、わたしたちが"結婚したのでは?"という話はまたたく間に広がっていった。
その中で誰よりも早くその話に触れてきたのは、ギフトコーナーの吉光さんだった。
「ちょっと菫ちゃん!どうしたの、その指輪!」
「えっ、あぁ···、ちょっと。」
わたしが曖昧に答えると、吉光さんは更にわたしに近寄り、小声で「もしかして、結婚したの?相手、日向主任でしょ?」と言ってきたのだ。
「何で分かるんですか?」
「分かるに決まってるじゃないの〜!だって、今までつけてなかった指輪を二人同じ時期につけるようになったんだもん!」
吉光さんはそう言いながら、わたしの腕をバシッと叩いた。
「いい男つかまえたね〜!名前は?まだ"日向"に変えてないね。」
「入籍自体は、年明けにする予定なんです。」
「あら、そうなの!いやぁ〜、若いっていいねぇ!」
吉光さんは微笑ましそうにそう言うと、腰から下げてるポシェットから何かを取り出すと、それをわたしに差し出した。
「はい、チョコレートあげる。」
「あ、ありがとうございます。」
「これは別に結婚祝いじゃないからね?ちゃんと別に渡すから!」
「いえ!そんないいですよ!」
「そんな遠慮すんじゃないのぉ!わたしがあげたいんだからぁ!」
そう言って吉光さんは、「大した物あげれないけどね。じゃあ、またね!」と言うと、ニコニコしながらギフトコーナーへと戻って行った。