陰日向に咲く儚花

それから、その日の休憩時間には、わたしにとって天敵であった二人がわたしの噂をしているところに出会してしまった。

いつもの小休憩を終え、わたしが事務室に入ると、そこには竜介が座るデスクの横に森田さんが立っていたのだ。

「野花課長知ってますぅ?菫ちゃん、結婚指輪してるんですよ〜。」
「あぁ、何か噂されてるよな。」
「野花課長と離婚してから、まだ半年くらいじゃないですかぁ。それなのに再婚って早くないですか?もしかして、野花課長とまだ結婚していた時に不倫してたのかもしれませんよぉ?」

どうしてもわたしを悪者にしたいのか、森田さんが竜介にそう話す声が聞こえてきた。

わたしは知らんぷりしながらハードのデスクにつくと、作業指示書の印刷を始めた。

「あー、あいつなら有り得るなぁ。」
「だって菫ちゃん、日向主任を言い寄るのに必死でしたもん。わたしは注意したんですよ?菫ちゃんには素敵な野花課長がいるでしょ?って。でも菫ちゃん、全然わたしの話し聞いてくれなくて〜。」
「そうだったの?今からでも訴えてやろうかな。」

そんな二人の会話に呆れながらもイライラしてしまうわたし。

(半年で再婚が早い。じゃあ離婚して2ヵ月で再婚した竜介と沙瑛さんは?わたしがいつ必死になって、慈に言い寄ってた?いい加減な作り話をするのはやめてほしい。)

そう思いながら、わたしが竜介と森田さんの話に耐えていると、「そんな作り話するのやめてもらっていいですか?」という声が聞こえてきた。

その声にふとそちらに顔を向けると、そこには呆れ顔を浮かべる慈の姿があった。

「ひ、日向主任······」

慈の登場に焦る森田さん。
しかし、慈は表情を変える事なく、ゆっくりと竜介と森田さんの近くまで歩いて行った。

「俺が菫に言い寄られた事なんて一度もありませんよ。先に好きになったのは、俺の方なんで。野花課長と離婚してからすぐに、俺の方が菫に猛アタックして、結婚前提のお付き合いをさせてもらってたんですよ。」

淡々とそう話す慈の言葉に、竜介も森田さんも何も言い返せずに表情を強張らせて固まってしまっていた。

それもそのはず。
こちらには非がないが、そちらは非だらけなのだから。
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