陰日向に咲く儚花
「俺達にやましい事なんて一つもありません。それをよく、野花課長と森田さんがそんな話し出来ますね。野花課長は、離婚してから2ヵ月で再婚。森田さんは色んな手を使って必死に菫の評価を下げようとしてましたよね。」
慈がそう言うと、森田さんは顔を真っ赤にして「そ、そんな事してませんよ!」と言っていたが、それ以上何かを言われると困る事でもあるのか、バツが悪そうにしどろもどろになっていた。
「それから森田さん。まだ休憩時間じゃないですよね?それなのに、何でこんなところで油を売ってるんですか?仕事に戻ってください。」
「ちょ、ちょっと事務室に用事があったんです。失礼しました。」
慈の言葉に森田さんは慌てて言い訳すると、すぐに事務室から出て行き、売場へ下りる階段がある方へと走って行った。
残された竜介は何だか事務室に居づらそうで「さて、俺も仕事に戻るか。」と独り言を呟きながら、何もなかったかのように椅子から立ち上がり、そそくさと事務室から出て行ってしまった。
その途端、事務室内で拍手が巻き起こった。
事務室内には、総務課の人たちか他の部署の数人が居たのだが、全員が今の話を聞いていたようで「日向主任かっこいいー!」という声と共に拍手をされ、慈は照れくさそうに「あ、いやぁ、失礼しました。」と笑って誤魔化しながら一礼をしていた。
その瞬間に目が合った慈とわたし。
わたしは慈に微笑みかけ、慈もまたわたしを見て微笑んでいた。
わたしの為に竜介と森田さんを言い負かしてくれた慈はカッコよかった。
そして、嬉しかった。
あんなに堂々と、自分から「猛アタックした」なんて言ってくれて、嬉しくないはずがない。
やはりわたしの判断は間違っていなかった。
竜介と離婚し、慈との再婚を決意したわたしの判断は正しかったのだと、実感出来た瞬間だった。