陰日向に咲く儚花

***



"師走"と言われるだけあり、あっという間に過ぎていく12月。

気が付けば、わたしたちはクリスマスを迎えていた。

しかし、クリスマスだからと言って仕事が休みなわけでも無ければ、いつもと変わらぬ忙しさに、クリスマスらしい雰囲気など忘れてしまう。

クリスマスギリギリになってもクリスマスラッピングに追われ、ここ最近はゲームや玩具がよく売れ、ラッピングばかりしていた記憶しかない程だ。

そこからやっと解放された20時頃。

残業を終えて外に出た時に、わたしはやっとクリスマスの夜だという事を実感した。

(はぁ···涼しい。)

忙しさから火照った身体に冷たい風が丁度良く感じ、街並みを彩るイルミネーションの中には仲睦まじい様子の恋人たちの姿があった。

去年までの今頃は、クリスマスだからといってクリスマスらしい事など何も無かった。

竜介はクリスマスでも仕事の後にそのまま外出して帰宅して来るのは深夜だったし、わたしに対して何かクリスマスらしい事をしてくれた事もない。

しかし、そんな過去は既に過ぎ去った。

今のわたしには、慈がいてくれる。

(これから帰ってチキンを焼く時間もないし、何かクリスマスらしいものを買って帰ろう。)

わたしはそう思いながらスーパーに寄り、二人で過ごす初めてのクリスマスの為に準備をしながら、慈の帰りを待った。

閉店時間まで仕事だった慈が帰宅して来たのは、時計の針がもうすぐ22時を差そうとする時だった。

「ただいまぁー!遅くなってごめん!」

そう言って急いで帰って来た様子の慈の両手には、ケーキ店の名前が書かれている白い箱とワインがぶら下がっていた。
< 97 / 114 >

この作品をシェア

pagetop