迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
フィリーネは紫紺蝶に向かって頷き、公爵に声をかける。
「公爵様、紫紺蝶が力を貸してくれるそうなので、ここは私たちにお任せください」
「任せるとはどういう意味……おい、お嬢さん! 待ちなさい!!」
後ろで公爵の引き止める声が聞こえたが、フィリーネは紫紺蝶を連れてそのまま廊下に出る。ミリーネがお仕着せに着替えるよう言ってくれて良かった。
ドレスだと全力では走れなかったから。
廊下を走り、階段を駆け下りたフィリーネは外に出た。
カロンと他の精霊師一族が必死に攻撃を防いでいる中、フィリーネだけが竜に近づく。
「お、お嫁様!? 危険ですから下がってください!!」
「大丈夫です。この子が力を貸してくださいますので」
狼狽えるカロンを尻目に、フィリーネは歩みを進める。
「どうか怒りを静めてください」
フィリーネの隣にいた紫紺蝶は二匹に分裂すると、竜の頭上まで飛んで紫の鱗粉を降り注いでいく。
「カロンさん、竜王陛下の全身に鱗粉が行き渡るように力を貸してください」
「しょ、承知しました」
フィリーネの要望を受けて、カロンが風を操る。
手を前に突き出せば、たちまちつむじ風が紫の鱗粉をのせて竜王陛下の全身を覆った。