迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
第39話 本当の意味は?
肩で息をしながらフィリーネがシドリウスを見つめる。
「……っ、その顔は反則だ。これ以上はやばいな」
シドリウスは、ほんのりと赤くなっている顔を隠すように口元を手で覆う。
(い、今のキスは一体何だったんでしょう。ううっ、心臓がいつも以上にドキドキします!! というか、シドリウス様の色気がっ、色気がいつも以上にむんむんです!!)
今のシドリウスを直視し続けたら絶対に気絶する自信がある。
フィリーネが視線を彷徨わせていたら、部屋の暗がりから紫紺蝶がふわりと現れた。
紫紺蝶の存在に気づいたシドリウスが、ある提案をする。
「そろそろ、精霊契約を結んでやったらどうだ?」
「私が紫紺蝶と結んでもいいのでしょうか……」
アバロンド家では、これまで闇の精霊師が光の精霊師の力を奪うとされてきた。
あの家でずっと言われ続けてきたせいで、いざ精霊契約となっても気後れしてしまう。
フィリーネが尻込みしていたら、察したシドリウスが安心しろと言うように、ぽんぽんと頭を優しく叩いてくれた。
「精霊契約を咎める者はもういない。フィーが闇の精霊師として力を発揮することで、救われる者がいる」
闇魔法は光魔法と似ているようでまるで違う。
そして、光魔法を阻むような魔法では決してない。
闇の精霊師が不幸を振り撒く訳でも、光の精霊師の力を奪う訳でもないのだ。
シドリウスは話を続ける。
「先代竜王だったギデリウスから聞いた話だが、闇の精霊は精霊の中で最も貴重な存在らしいぞ」
「そうなんですか? 光の精霊ではなく?」
「他の精霊と比べて闇の精霊は魔力の影響を受けやすい。精霊界とこちらの世界では魔力の濃度が異なるから簡単には来られないんだ。フィーの側を離れない闇の精霊は、危険を冒してまでやって来たと言えるな」
初めて知った事実にフィリーネは息を呑む。
紫紺蝶は精霊の祝福をしてずっと自分を見守ってくれていた。側を離れないでいてくれた。そんな紫紺蝶に今こそ報いるべきではないだろうか。
勇気づけられたフィリーネは紫紺蝶の前に進み出る。