迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「嫁いだからにはこの屋敷に二度と帰ってこないで。マツの木とよろしくやっていなさい。ああ、そうだ。餞別としてウエディングドレスを用意してあげる。この間、お祖母様のウエディングドレスが物置きにあるのを見つけたの。マーシャ、すぐに準備して」
「お嬢様、どうか考え直してください。いくらなんでもこれはまずいです」
マツの木と結婚させるにしろ、こんな嵐の中での決行はどう考えても体罰の部類に入る。
ミリーネが紫紺蝶から仕返しを受けるかもしれないし、フィリーネの体調も心配だ。
苦言を呈するマーシャに、ミリーネが眉間に皺を寄せて一喝した。
「使用人風情が誰にものを言っているの? 黙って私の命令に従いなさい。さもないと暇を出すわよ!」
これ以上マーシャが意見したところで意固地になるだけだろう。
もう誰もミリーネを止められない。
マーシャは諦めの表情を浮かべた。
「……すぐに着替えさせますのでお待ちください」
こうしてフィリーネは純白のドレスを着せられた挙げ句、マツの木のもとへと送られた。
――そして現在に至るのだが。
長時間雨に当たっているせいで体温が奪われ、フィリーネは身体を震わせていた。歯もカチカチと音を立てていて、歯を食いしばっても止まらない。
それでもフィリーネは己を奮い立たせ、この場を耐え忍んでいた。