迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
フィリーネは重たい瞼をゆっくりと開けた。
目の前には梁材が剥き出しになった天井らしきものが見え、視線を走らせれば出窓のようなものがある。長方形をした窓からは外の明るい光が降り注いでいた。
どうやら嵐はやんだようだ。
天井から自分に視線を下ろすと、フィリーネはベッドに横たわっていた。身体には手触りの良いブランケットがかけられている。
(あの状況下で私は助かったのですか?)
崖からマツの木ごと落ち、幹が割れて縄は解けたものの、ウエディングドレスの重みで水面まで浮上できなかった。あんな状況で無事に生還したなんて信じられない。
死んで幽霊になっていないか、自分のほっぺを抓ってみる。
痛い。痛覚ははっきりしている。身体も透けていないので死んではなさそうだ。
フィリーネは生きていることに安堵の息を漏らした。
(誰かが私を助けて介抱してくださったようですね)
着ている服もウエディングドレスからゆったりとした綿のワンピースに替わっているし、きつく締められていたコルセットも外されている。
(助けてくれた人にお礼を言いませんと。あと、いくつか質問もしたいです)
自分がどうやって助かったのかや、どれくらい眠っていたのか情報が欲しい。
それから眼鏡が無事かどうかも。眼鏡がないと遠くがはっきり見えない。非常に困る。
意識を失う寸前まで眼鏡をかけていたのは覚えているけれど、それからどうなったのかは分からない。もしかしたらテネブラエ湖の底に沈んでしまっているかもしれない。
(命が助かっただけでも奇跡だと思わなければいけませんね)
フィリーネが上体を起こすと、部屋の扉が開いた。