迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「フィリーネ様の具合が悪くなさそうで一安心だよ。だって、食べるなら死体よりも健康な身体が良いに決まっているし、シドリウス様にそういった趣味はないから」
「ええ、私も目覚められて良かったです、ヒュ……うん?」
後半の内容に引っかかりを覚えたフィリーネは、こてんと首を傾げる。
目が覚めたのを祝ってくれたその後に、衝撃的な言葉を放ちはしなかっただろうか。
「食べるなら死体よりも健康な身体?」
極めて物騒な発言をした気がするが、こちらの聞き間違いだっただろうか。
頭上にたくさんの疑問符を浮かべるフィリーネに、ヒュドーは真顔で答えた。
「ああ言ったよ。生贄の儀式は二百年前に法律で禁止されてから久しいけど。でも、やっぱり生贄には若くて健康的な乙女が一番だね!」
ヒュドー曰く、生贄の花嫁はテネブラエ湖の崖上に生えているマツの木にウエディングドレス姿で括りつけられるらしい。それが古くから伝わる習わしのようだ。
ここでフィリーネに一つの疑問が生じる。
(私が聞いた話と内容が違います。マーシャ曰く、マツの木は迷信で脅し文句に使うだけ。実際に生贄の花嫁になった者はいないはずです)
それに、ミリーネは行き遅れの娘がマツの木と結婚するだけで食べられるなんて言っていなかった。
そもそも、植物は人間を食べない。その時点で齟齬が生じている。
一体、誰の生贄の花嫁としてフィリーネは捧げられたのだろうか。
その疑問に答えるようにヒュドーが言った。