迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


「まだ体力は回復していない。動き回るのはやめておいた方がいい。それにこの三日、ヒュドーがマツの木があった場所を見に行ってくれていたが、誰も訪ねては来なかった」
「アバロンド家の者は誰も訪ねて来なかったのですか? あっ、そういえば……」

 フィリーネはミリーネの言葉を思い出す。
 すっかり忘れていたが、怒りが頂点に達したミリーネから言われたではないか。
 この屋敷に二度と帰ってくるな、と。

 ミリーネはその言葉の通りに迎えを寄越さなかった。
 フィリーネは完全にアバロンド家から見捨てられたのである。
 したがって、フィリーネがマツの木ごと湖に落ちて溺死したところで関知しない。

 フィリーネは急死に一生を得ても、この先どう生きれば良いのか分からなかった。
 一番最初に頭に浮かんだのはどこかの屋敷で働くこと。
 けれど、それには紹介状が必要だ。
 ないと身元が保証されない。どこにも雇ってもらえない。
 普段は前向きなフィリーネだが、現実が甘くないことくらいは知っている。

(このままだと職を得られずに野垂れ死ぬのがオチですね。寂しい最期を迎えるよりも、誰かの役に立って死にたいです)
 黙考しているフィリーネの視界にシドリウスが映る。その途端、フィリーネはハッとした。
 自分が役に立って死ねる唯一の方法が、目の前にあるではないか。

< 37 / 106 >

この作品をシェア

pagetop