迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
カロンは深々と頭を下げた。
「今後このようなことがないよう肝に銘じるのでございます。ただ、今回お嫁様に刃物を許したのには、わたくしなりに理由がございます。シドリウス様に一つ小耳に挟んでいただきたい内容がございまして――」
カロンはシドリウスに近づくと何やら耳打ちを始める。
最初は胡乱な表情で話を聞いていたシドリウスだったが、尖った耳の先が徐々に赤くなっていくのが見えた。
話し終えるとカロンが離れる。それと同時にシドリウスはこほん、と咳払いをした。
「カロンの行動の意図はよく分かった。今回は大目にみるが、やはり刃物は危険だ。もし次にフィリーネが暴走したら必ず止めるように」
「承知しました」
二度と過ちは起こさない、というようにカロンは力強く頷いてみせる。
カロンがどんな話をしたのかは分からないが、とにかくシドリウスの怒りは静まった。 安堵の息を漏らしていたら、シドリウスが甘やかな瞳でこちらを見つめてくる。
「フィリーネも小指は斬り落とさなくていい。というか、どこも斬らなくていい。俺のために五体満足でいてくれ」
「分かりました。斬るのはやめておきます!」
フィリーネがキリッと眉を上げて返事をする。
シドリウスは話が済んだというように視線をテーブルへと動かした。
「遅れてしまったが食事にしよう。フィリーネの身体はまだ回復したばかりだ。食べて体力をつけないと」
シドリウスに手招きされたフィリーネは、席へと移動した。
案内された席はシドリウスの隣だった。