迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
フィリーネが着席すると、頬にかかった白銀色の髪をシドリウスが耳にかけてくれる。
「そのワンピースと髪の色の組み合わせはよく合っている。おまえの髪は絹糸のように美しいな」
フィリーネは喫驚した。まさかカロンだけでなく、シドリウスからも白銀色の髪を褒められるなんて思ってもいなかったのだ。
(二人とも私に気を遣ってくださっているんでしょうか。なんて優しいのでしょう)
長年、白銀色の髪を薄気味悪がられてきた。
二人が髪を誉めてくれても、フィリーネはただのお世辞で本心からとは思わなかった。
「カロンさんが選んでくれたんです。この髪色では服に合う色も難しいので」
「そんなことない。フィーなら、何を着ても似合うし可愛いと思うぞ」
「フィー?」
突然愛称のようなもので呼ばれたフィリーネは内心動揺した。
誰かに愛称で呼ばれるなんて初めてだったからだ。
(お父様はお姉様を『ミリー』と呼んでいますが、私は愛称どころか『忌み子』と名前ですら呼んでもらえません。愛称呼びが羨ましくて、いつか呼んでもらおうと思っていたのですが。……まさか、シドリウス様に夢を叶えていただけるなんて!)
感激するとともに心の奥がくすぐったい。
フィリーネが身じろいでいたら、シドリウスの手がいつの間にかひび割れた眼鏡のフレームへと伸びてくる。
「似合ってないと言えば、これはいただけない。フィーの可愛い顔が見えないからな」
現状、カロンが用意してくれたワンピースと綺麗にまとめてくれた髪はひび割れた眼鏡のせいで台なしになっている。
姿見で自分の姿を見たフィリーネも同じことを思っていた。
しかし、これがなくては生活に支障を来たしてしまう。
「私にはこの眼鏡が必要です。ないと何も見えないので」
シドリウスはフィリーネの両頬を両手で優しく包んだ。
「大丈夫だ。これから未来永劫、眼鏡は不要になる」
「それって……」
どういう意味なのか尋ねようとする前に、シドリウスの大きな手が眼鏡をはずし、瞼を覆う。