迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~

第12話 蘇る鮮やかな世界



 次の瞬間、フィリーネの眼球が熱くなった。瞼は閉じているけれど、ギュッと力を入れてしまう。
 初めての体験に戸惑っていると、ほどなくしてシドリウスの手が離れた。

「目を開けてみてくれ」
 言われた通り閉じていた瞼を開ける。
 周りの世界を認識した瞬間、フィリーネは目を瞠った。


「わあっ、眼鏡がなくてもシドリウス様の顔がはっきり見えます!」
 いつもぼやけていた世界が鮮明になっている。肉眼ではっきりと周りを捉えたのは何年ぶりだろうか。
 辺りを見回すフィリーネに、シドリウスが説明をした。

「魔法でフィーの視力を回復させたんだ。人間は精霊と契約しなければ魔法が使えないが、竜人族は自由自在に魔法が操れるからな。ささやかな贈り物だが喜んでもらえただろうか?」
「ささやかどころか大層な贈り物です! 眼鏡なしでまた生活ができるなんて夢のようです。シドリウス様、ありがとうございます」
「……俺はフィーが喜んでくれるならなんだってする」
 手放しで喜ぶフィリーネはシドリウスが熱を帯びた目でこちらを見ていることに気づかない。



「食事をお持ちしたのでございますよ」
 厨房からカロンがワゴンを押してやってくると、テーブルの上に料理を運んでくれた。

 バターの芳醇な香りがするロールパンや、季節の野菜がたっぷりのスープ、オムレツと厚切りベーコンなど、どれもこれもフィリーネの食欲をそそった。

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