迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「こんなに豪勢な朝ごはんは生まれて初めてです」
これまでの食事といえば、数日経ってカチカチになったパンとくず野菜のスープばかりだった。
いみじくもハビエルは闇の精霊の逆鱗に触れないよう、加減をしながらフィリーネを虐げていた。
味方である使用人たちは雇い主であるハビエルと魔法の雇用契約書を交わしている。
その内容には闇の精霊について屋敷以外で他言しないことに加え、フィリーネに栄養のあるものを与えてはいけないという一文が添えられている。
逆らえない彼らはフィリーネに粗末な食事を出すしかなかった。
フィリーネは脂の乗った厚切りベーコンに目を輝かせる。
(一度でいいから厚切りベーコンを食べてみたかったんですよね)
厚切りベーコンをナイフとフォークで丁寧に切り分けると、フィリーネはその一切れを口に運んだ。
豚の脂身はカリカリで甘く、赤身の部分は塩加減が丁度よくて美味しい。
幸せそうに頬に手を当てて食べていたら、シドリウスがクスリと笑う。
「気に入ったのならこれも食べろ」
そう言って、厚切りベーコンを自分の皿からフィリーネの皿へと移してくれる。
フィリーネは慌てて止めに入った。
「これはシドリウス様の厚切りベーコンです。私がいただくわけにはいきません!」
「遠慮するな。俺はフィーが食べる姿を見ているだけで幸せになれる。それにたくさん食べないと体力はつかないし、大きくなれないぞ」
フィリーネは下を向いて自分のお腹を触ってみる。指でつねっても皮だけで肉らしい部分はない。
胸の膨らみもミリーネの豊満な膨らみと比べて小さかった。こんな身体のままではシドリウスを到底満足させられない。生贄失格である。
フィリーネはシドリウスの厚意に甘えることにした。
「ではお言葉に甘えて。私、たくさん食べて一日でも早く大きくなりますね!」
「ああ、そうしてくれ。でないと本番で辛い思いをするのはフィリーネだからな」
「そうなんですか?」
フィリーネはこてんと小首を傾げる。
本番で食べる部分が少なくて辛い思いをするのはシドリウスの方では?
そんな疑問が頭を過ったけれど、次に食べたオムレツがあまりにも美味しすぎたせいで吹き飛んでしまった。