迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


「ご理解いただけましたでございましょう? わたくしが担当しているのは料理と物品の在庫管理、帳簿管理くらいです。掃除道具はありますが滅多に使いません」
 屋敷の衛生面が魔法で管理されていることも、カロンが何の仕事を担当しているかも分かった。納得はしたけれど、それでもフィリーネは食い下がる。

「皆様には親切にしていただいてばかりです。どうか、できることをやらせてください。じっとしているなんて性に合いません!」
 懇願すると、フィリーネからモップを取り上げたカロンが優しく言う。
「お嫁様にはシドリウス様の花嫁として、礼儀作法と教養を身につけていただくのでございます。わたくしの本来の役割は花嫁の教育係ですから」

 成人したら食べられるのに、礼儀作法と教養を学んでおく必要があるのか甚だ疑問だ。
 しかし、それはフィリーネの好奇心を刺激した。

(お父様の指示で必要最低限の読み書きと計算しか教わりませんでしたが、あれはとても楽しかったです。食べられるまでにまたあの素敵な時間を味わえるのですか!?)
 フィリーネの学びたい欲がむくむくと膨れ上がる。

 うずうずしているのがカロンにも伝わったのだろう。彼女は淑やかに笑った。
「存外学ぶのはお嫌ではないようで安心しました。図書室に教材がありますので、取りに行って授業を始めましょう」
「はい! よろしくお願いします」

 心が浮き立つフィリーネは、元気よく返事をするとカロンと共に図書室に足を運んだ。

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