迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
夢塞病は発症者の体験や精神面から大きな影響を受けて悪夢を形成する。
最近のシドリウスは、フィリーネに拒絶される夢ばかり見るようになってしまった。
竜人にとって番は運命の相手。相手の望みはどんなことでも叶えてあげたくなるし、死ねと言われたら喜んで死ぬのが竜人の性だ。
夢と分かっていても番に拒絶されるのは身を引き裂かれるほどに辛くて苦しい。
ようやっとフィリーネという番が見つかったというのに、シドリウスは日増しに寝つきが悪くなっていた。
「シドリウス様や公爵が一日でも早く病を完治できるよう引き続き調査してみますね」
「ああ、頼む。ところで頼んでいた例の調査は進んだのか?」
話を切り上げたシドリウスは次の話題に移る。
夢塞病の件も重要だが、今から話す内容もまた然りだ。
「もちろんです。フィリーネ様のことならきちんと調べてきましたよ」
ヒュドーは胸ポケットにしまっていた手帳を取り出してパラパラと頁を捲る。
「フィリーネ様はアバロンド伯爵家の次女。社交界では病弱で屋敷に引き篭もっているとなっていますが、出回っている情報は嘘のようですね。身体が痩せているにせよ、病弱ではありませんから。あと、姉のミリーネ嬢は光の精霊師として有名です。誰にでも分け隔てなく接する美人で『社交界のエトワール』という異名まであるようです」
ヒュドーの報告にシドリウスの目が鋭くなる。
「つまり伯爵家の者はフィーを虐げている、そういうことだな?」
食堂で一緒に朝食を食べた時、フィリーネはこんなに豪勢な朝ごはんは生まれて初めてだと言っていた。それが一般的なメニューにもかかわらずだ。
これまで一体どれほど粗末な食事が与えられていたのか察しがつく。
シドリウスは剣幕な声で言う。
「今すぐにでも八つ裂きにしてやりたい。いや、フィーが味わった苦しみと同じものを一族に味わせてやる。そう簡単には死なせないぞ」
怒りの炎を燃やすシドリウスに、慌ててヒュドーが手で制す。