迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
第15話 つけ合わせにハーブ
***
「フィリーネ様、ここで何をしてるの!?」
緑に囲まれた中庭でフィリーネがつば付き帽子とエプロンをつけて作業をしていると、後ろからヒュドーが声を張り上げてきた。
初春を迎えた中庭は長い冬を乗り越えた木々から深緑が芽吹き青々としている。ブルーベルの青い花が見頃を迎えて景色に鮮やかさが増していた。
しゃがんで作業をしていたフィリーネはスコップを持ち直して立ち上がる。
「見ての通り鉢に苗を植えて家庭菜園をしておりました!」
フィリーネはにっこりと笑みを浮かべて元気よく答える。
ここでの生活を始めて二週間が過ぎた。
最初こそ屋敷仕事をしなくて良いことに戸惑いを覚えていたが、だんだんとこの生活にも慣れてきた。
カロンはいつも献身的に支えてくれるし、シドリウスは必ず食事を共にしてくれる。
ヒュドーもこうやって時間を見つけては話しかけてくれるので親切だ。
おかげでフィリーネはアバロンド家で暮らしていた時よりも豊かで穏やかな生活を送れている。
(湖に落ちて死ぬ運命だったはずが、まさかこんな幸運に恵まれるなんて)
高揚感に浸っていたら、頭の隅でもう一人の自分が警鐘を鳴らす。
というのも、生贄の花嫁になったのにシドリウスがフィリーネを欲しそうにする素振りがちっともないからだ。本当に成人したら食べてくれるのか疑わしくなる。
フィリーネは会うたびに味見はどうかと尋ねているが、返ってくる答えはノーだった。
(まあ、体重は増えていませんのでそそられないのかもしれませんが……味見をして美味しいと分かった暁には一気に召し上がっていただきたいですね)