迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
たった数ヶ月、されど数ヶ月。
その間にこの世に未練が残ってしまったら、フィリーネの覚悟は揺らいでしまう。だから一刻も早く、シドリウスに食べてもらいたいのだ。
(このまま大人しく待っていても仕方ありません。できることから始めていきましょう)
フィリーネは少しでもシドリウスの食指が動くよう、新たな対策を講じている。それがこの家庭菜園だ。
「僕が気になるのは、家庭菜園で育てようとしている品種だよ。それは明らかに雑草だよね?」
ヒュドーはフィリーネの鉢植えを指差した。
植わっているのはタイムにミント、セージ。どれもハーブで、ヒュドーが言うように屋敷の周りに生えている雑草ばかりだ。
「雑草ではありません。ハーブです。香りづけにぴったりなんですよ」
「へえ。でもそれ、どうするつもり?」
よくぞ訊いてくれた、と言うようにフィリーネは自信満々に眉を上げる。
「当然、シドリウス様に私を美味しく召し上がっていただくために決まっているじゃないですか。やはり風味づけがあるとワンランク上がると思うんです!」
「待って待って。フィリーネ様はこの間、僕が遠回しに言った表現をド直球で受け止めてない!?」
ヒュドーは面食らった。自分が食べると表現したせいで、フィリーネがシドリウスに物理的に食べられると信じているのではと心配になった。
ヒュドーは口を開きかけては閉じるを繰り返す。やがて、困ったという風に頭を掻いた。