迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「ええっと。どう訊いたらいいんだろう。本当に分かっているのか確認を取りたいけど、あけすけな言葉だとフィリーネ様に恥をかかせてしまうよ。……体面だって悪くしてしまうし」
口元に手を当ててぶつぶつと呟くヒュドーに対して、フィリーネは真剣に答える。
「ヒュドーさん、シドリウス様はどのハーブがお好きかご存知ですか? 私、一日でも早くシドリウス様のお役に立ちたいんです」
「えっと。その心意気には感心するけど、今のフィリーネ様ではシドリウス様は絶対手出ししないと思うよ?」
「はい、存じております。だからハーブなんです。香りが良ければ私に関心を持っていただけるでしょう?」
カロンの出してくれる料理には食欲を刺激するローズマリーやバジルが飾られている。
それをヒントにしたフィリーネは、自分にもハーブを飾れば良い香りがしてシドリウスの食欲を刺激できるという結論に至ったのである。
目をぱちぱちと瞬いたヒュドーはしばらくして手のひらにポンと拳を乗せ、納得の声を上げた。
「ああ、なるほど。香りで誘惑作戦か! 良かった、勘違いしてる訳じゃなくて。フィリーネ様も遠回しに話してくれていたんだね!」
ヒュドーには、フィリーネの話が身体に香りをつけてシドリウスを誘惑しようと努力している内容に聞こえた。
わざわざ屋敷の外に生えているハーブを摘んできて自ら育てようとしている。
その涙ぐましい努力にいじらしささえ覚えた。
ヒュドーは鉢の中を覗き込む。
「どれも悪くはなさそうだけど、シドリウス様にはリラックスできるものを選んで。ラベンダーやカモミールあたりが良いと思う。というか、僕に言ってくれたらいくらでも調達するから!!」
ヒュドーはガシッとフィリーネのスコップを持つ手を握り締める。その熱の入りっぷりにフィリーネは目を瞠った。
まさかヒュドーがここまで真剣に相談に乗ってくれるとは思っていなかったので、協力者の登場はありがたい。