迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「ありがとうございます。私にはどの香りが最適なのか分からないので、ヒュドーさんにお任せしますね」
「うん、任せて。とびっきり良いものを用意するからさ」
話がまとまって、フィリーネはほこほこと笑みを浮かべた。
「ヒュドー、そこで何をしている?」
横から声がして顔を向けるとシドリウスが玄関前に立っていた。相変わらずの美貌だが、普段と違ってその表情はやけに険しい。
つかつかと足早にこちらにやって来たシドリウスは、フィリーネの手を握っているヒュドーの手首を掴んで、ぺいっと引き剥がした。
「その手はなんだ。誰の許可を得てフィーに勝手に触れている?」
「横恋慕する気はないのでご安心ください。意気投合してつい魔が差したといった感じなので。誤解なきようお願いします」
ヒュドーは苦笑しながら言った。
それでもシドリウスは目の鋭さを緩めない。
「なら二度と誤解を生むような真似はするな。もう下がって良い」
牽制するようにフィリーネの肩を抱くシドリウス。
ヒュドーは肩を竦めてから一礼すると、屋敷の中に入っていった。
姿が見えなくなるまで見送った後、シドリウスがフィリーネに顔を向ける。
「それで、フィーは何をしていたんだ?」
「ええっと、私はハーブを育てようと思いまして。鉢に植えていました」
あなたを誘惑するためにハーブを育てていますだなんて口が裂けても言えない。
愛想笑いを浮かべて誤魔化していたら、目の前に一輪の花が差し出される。
透明の花びらが太陽に当たると虹色に光る、不思議な花だった。