迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
第16話 月光が降り注ぐ下で
一日が終わり、寝る支度を終えたフィリーネは今日受けた授業内容を復習していた。
家庭菜園を終えた後、フィリーネはカロンから礼儀作法と教養を学んでいたのだ。
元来、好奇心旺盛な性格なため、授業は苦ではなかった。
カロンはそんなフィリーネの姿を微笑ましく思っているのか、礼儀作法と教養だけに留まらずダンスまで教えてくれるようになった。
これらの内容がシドリウスに食べられることとどう関係があるのか分からないけれど、フィリーネは授業が楽しくて仕方がない。
「生贄のはずなのに、まさか勉強する機会に恵まれるなんて」
要点を読み直し終えたフィリーネはノートを閉じて顔を上げる。
机の隅には、茶色の小瓶が置かれていた。これはヒュドーからもらったラベンダーの香油だ。
流石はあの歳でシドリウスの秘書をしているだけはある。その日のうちに香油を手に入れてフィリーネのところまで持ってきてくれた。
試しに手首につけてみると、柔らかい花の香りとすっきりとしたハーブの香りがする。
「とても良い香りですね。これならシドリウス様の食指も動くはずです」
フィリーネが小瓶に蓋をしていると、部屋の暗闇から紫紺蝶がひらひらと飛んできた。
昼間は黒色の光を纏っているが、夜は翅の紫紺色の部分が光を放っている。